2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K12693
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
本田 みちよ 明治大学, 理工学部, 専任教授 (20384175)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 組織再生 / 血管新生 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体機能を発現するための組織再生には,酸素や栄養素を供給できる「成熟した機能的な血管ネットワークの構築」と「生体内環境に類似し,細胞間相互作用を促進する三次元培養環境」を提供する必要がある。本研究では,血管新生を起点とした組織再生を実現するために,間葉系幹細胞MSCに注目し,特に,MSCの持つ細胞特性を制御し,優れた血管新生能を有する馴化培地やエクソソームを回収することを目指す。すなわち,MSCにより分泌される液性因子やエクソソームに注目して,効率的に血管新生を促進させる方法を模索する。 今年度は,昨年度より作製していた成長因子を過剰発現するMSCの細胞特性評価を主に実施した。通常のMSCの馴化培地も細胞遊走性や血管新生を促進させるが,本研究で作製した過剰発現細胞は,それらの機能が大きく向上することを確認した。この細胞の利用は,従来のMSCを利用した場合に比べ,効率的に血管新生を誘導することが可能となると考えられる。他方,成長因子過剰発現MSCは骨分化が抑制され,未分化能を維持している可能性も示された。これらの結果は,作製した細胞が組織再生に有用な手段として利用できることを示唆する。 また,再生を目指す歯周組織を構成する細胞については,歯根膜線維芽細胞と血管内皮細胞の最適な共培養比が決定した。さらに毛細血管網の構築には線維芽細胞が産生する液性因子と内皮細胞が産生する液性因子が相互に作用し,組織再生に寄与することを明らかにした。今後はこれらを組み合わせた再生組織の構築に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画においては,内皮細胞との共培養によって変動する因子を探索し,さらにそれを利用して血管新生能を評価する予定であった。しかし,成長因子を過剰発現させた細胞において,高い血管新生能と特定の細胞への分化の抑制,すなわち未分化能の維持が示唆される細胞を作製することができたので,過剰発現細胞を利用したアプローチへと変更した。 その結果,血管新生に関与する種々の遺伝子の発現を亢進させ,液性因子としても多くの成長因子を分泌可能であることを確認した。また,未分化状態のMSCは血管新生促進効果などをもつ生理活性物質を分泌し、パラクライン効果を介して組織修復を支持することから,細胞の未分化性も非常に重要である。本研究では外部刺激によりこれを実現することを計画していたが,過剰発現細胞においても骨分化の抑制が認められ,未分化能を維持可能であることが示唆された。細胞の遺伝子発現を制御することで,目的の効果を有する細胞の作出が可能となった。 また,他の歯周組織構成細胞については,歯根膜線維芽細胞と血管内皮細胞との適切な共培養により,機能的な血管網を有する細胞構造体を作製する条件を決定した。歯周組織構成細胞群にMSCを加えることで,生体を模倣した組織再生につながることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
In vitroの実験系では,成長因子を過剰発現したMSCと歯根膜線維芽細胞と血管内皮細胞を共培養し,組織構築の過程を様々な観点から評価する。また,MSCおよび共培養下で培養した細胞からは馴化培地もしくはエクソソームを単離し,これをスキャフォルドへ担持させ,in vivoにおける血管新生や組織再生の過程を観察する。
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