2021 Fiscal Year Research-status Report
Nonclinical Approaches to Determining the Acceptability of Breastfeeding in the Pharmacotherapy of Lactating Women
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21K12764
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
小森 浩二 摂南大学, 薬学部, 准教授 (60611598)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳汁移行性 / ヒト乳腺上皮細胞(HMEC) / 高速液体クロマトグラフィー / 緑茶アミノ酸(テアニン) |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度における成果は大きく分けて3つある。 ①ヒト乳腺上皮細胞を用いた単層膜の膜透過実験の実験系の構築(計画書目標②) ②スクリーニング対象薬物として緑茶アミノ酸(テアニン)の追加(計画書目標①) ③マウスを用いたスクリーニング試験における定量精度の向上(計画書目標①) 令和2年度は主に計画書目標②である「薬物動態学的または輸送体の影響確認」を遂行するため、不死化ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)を用いた単層膜の膜透過実験の実験系構築に注力した。その結果、すでに木村らによって確立されている系ではあるが、本研究室での再現に目途が付いた。その構築過程において、HMECが想定していたよりもデリケートである性質に基づき、当初の予定であった抗がん剤(5-FU)を用いた最初の検証実験は不可能と判断した。代わりに細胞を傷害しにくい成分としてアミノ酸であるテアニンを用いることとした。そのため、テアニンを対象にマウスを用いてスクリーニング試験したところ、血中濃度が30分で最高に到達するのに対し、乳汁は少し遅れて最高に達し、マウスの乳汁に移行する可能性が示唆された。テアニンは睡眠改善を目的にしたサプリメントとして販売されているが、乳汁移行性に関する報告は無く、本研究の対象としては非常に有用であると判断できる。また本研究でのスクリーニング試験は、高速液体クロマトグラフィーで実施することから、多くのクロマトデータの集積が予想されたため、令和2年度はクロマトグラムの取り込みソフトを新規購入した。その結果、データ整理の効率が向上したほか、波形解析も詳細に行うことができ、検量線作成の際など定量限界の精度をこれまでの5%程度向上させることが見込めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進捗の遅れの原因は主に2つある。一つ目は新型コロナウイルス感染拡大に伴う研究活動の制限(具体的には同時に実験できる人数の制限)、二つ目は不死化ヒト乳腺上皮細胞を用いた透過実験に関する細胞の特性によるものである。 令和2年度の計画として、医薬品選択の適切性を考慮しながら、ミルタザピン、トピラマート、エドキサバンの3つ程度の医薬品の乳汁移行性について、マウスを用いたスクリーニングを行うことと、不死化ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)で作成した単層膜透過実験の実験系の確立し5-FUを用いて検証することであった。しかし現在、HMECで作成した単層膜透過実験の実験系の確立に目途は付いたものの、上述4つの医薬品について乳汁移行性の検討は出来なかった。代わりに緑茶アミノ酸であるテアニンの乳汁移行性のスクリーニングが出来た。 一つ目の影響では、当初本研究を3名ないし4名で遂行することを想定していたが、研究室の収容人数の影響で1名ないし2名と制限した。そこで1名は常に、HMECによる単層膜透過実験の確立を優先させたため、スクリーニング試験の進捗が大きく遅れた。さらに購入したHMECの培養は、播種可能な細胞数に増殖するのにおよそ3週間を要し、トリプシン耐性化を行うのにさらに3週間、また単層膜構築するためのチャンバー内に播種後も経上皮抵抗が上昇するのに2~3週を要する。複数回の試行を重ね、すでに報告されている通り、細胞の増殖、経上皮抵抗の上昇を確認できた。しかしながら、継代後の増殖の増え方等から、非常にデリケートな細胞であることが想像でき、最初の膜透過実験では、抗がん剤である5-FUを使用するよりも、細胞を死滅させない薬物として緑茶アミノ酸であるテアニンで検証することとした。現在、テアニンのスクリーニング試験を実施、乳汁に移行する可能性が確認でき、膜透過試験を実施するところである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、本研究に従事している人数は1名ないし2名であるが、新型コロナ感染の感染状況から、研究室の人数制限は改善してきている。具体的には3名程度の同時進行が見込める状況である。HMECによる単層膜透過実験の確立には、薬物が細胞の隙間を通って移行しないことを、蛍光標識したデキストラン用いて確認する必要があると考えている。それと同時に令和3年度では、スクリーニング試験に注力する予定である。しかしながら令和2年度、テアニンのスクリーニングを実施した結果、当初予定していたミルタザピン、トピラマート、エドキサバンの検討ができていない。テアニンは想定よりもスムーズに評価できているものの、コストを要した。引き続き対象医薬品の選定は考慮していくが、いただいた費用を最大限活用するため、コストパフォーマンスを考慮し、3年間で検討予定であるミルタザピン、トピラマート、エドキサバン、アルプラゾラム、ガバペンチン、リバロキサバンの6品目について、変更や絞り込む可能性を検討していく。
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Causes of Carryover |
費用の使用期限に近づくにつれて、プラスチック製消耗品等の購入で調整していたが、卸値等の見積もりを間違えてしまった。そのことに気付き、再度調整を試みたが期限切れとなってしまいました。令和3年度の消耗品等に使用させていただく。
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