2021 Fiscal Year Research-status Report
『魂について』を核とするアリストテレス認識論の再構成
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21K12837
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Research Institution | International Pacific University |
Principal Investigator |
酒井 健太朗 環太平洋大学, 次世代教育学部, 講師 (90816977)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アリストテレス / プラトン / 感覚 / 知識 / 教養 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度(1年目)は、アリストテレス『魂について』の「感覚」概念について、テクストベースの研究を行った。結果として、先行研究がその役割を等閑視しがちな「付帯的感覚」こそ、彼の認識論を再構成するための基礎となりえることが明らかとなった。アリストテレスにとって感覚とは感覚対象の「形相を受容する」ものである。しかし、固有感覚や共通感覚は、認識論の最終的な目的の1つであると考えられる学問的知識が扱うような対象を感覚対象としない。それゆえ、アリストテレス認識論の基礎に感覚が存在するのであれば、それは固有感覚や共通感覚が対象としないものの形相を受容しうる付帯的感覚でなければならないだろう。 また、研究代表者が本研究開始前に出版した『アリストテレスの知識論──『分析論後書』の統一的解釈の試み』(九州大学出版会、2020年)への批判的書評7本への応答論文を執筆することによって、アリストテレスの認識論はその知識論という枠組みの中で前提されている理論であることの確信を得られた。したがって、『分析論後書』の知識論と『魂について』の認識論の比較考察を今後も行っていかねばならない。 さらに、アリストテレスの認識論および知識論を相対化して理解するという目的のもと、プラトンの『プロタゴラス』における教養概念の考察を試みた。結果として、この対話篇のプラトンは、教養ある「態度」こそが学問的(専門的)知識を獲得するための重要なファクターであると理解していることが確認された。それゆえ、プラトンの思想を批判的に受容することで自身の哲学を構築していったアリストテレスの認識論を十全に理解するためには、彼の教養についての見解を参照する必要があることも予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症対策のため対面での学会や研究会にて研究成果の発表を行うことはできなかったものの、オンラインワークショップを開催し、英語にて研究成果を発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度(2年目)には、2021年度の研究成果を論文として発表すること、および、「表象」概念の考察を進展させることを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症対策の影響で旅費の支出機会がなく、余剰が生じた。この余剰金額については、主に、次年度の研究に必要とされる書籍を代表とした物品の購入費用に充てることを計画している。
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Research Products
(5 results)