2022 Fiscal Year Research-status Report
『魂について』を核とするアリストテレス認識論の再構成
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21K12837
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Research Institution | International Pacific University |
Principal Investigator |
酒井 健太朗 環太平洋大学, 次世代教育学部, 講師 (90816977)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アリストテレス / 感覚 / 表象 / 記憶 / 想起 / 経験 / 教養 / 観想 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度(2年目)は、『自然学小論集』のうちの『記憶と想起について』を参照し、これまでそれ自体として論じられることの少なかったアリストテレスの想起論を明確化することを試みた。結果として、人間のみが実行できるこの想起は、過去の実際の感覚から生じたもののその由来を忘却してしまった表象内容を、過去の感覚に接続するものであることが明らかとなった。したがってアリストテレスの想起は、感覚→記憶→経験→知性という経路をたどる彼の認識論において、記憶の定着を助ける役割を持つ。 また、前年度に引き続き、古代ギリシア哲学における教養概念の考察を行った。今年度の検討対象はアリストテレスの『動物部分論』第1巻第1章である。アリストテレスはその箇所で、教養を「的確な判断力」と規定する。このような教養は、先行研究の批判的検討を行うアリストテレス的な専門家にとって不可欠なものである。密接な関係にある知識論(学問論)にとって教養が重要であることは、認識論研究において教養を無視できないことを示唆するだろう。 さらに、『政治学』の公教育と余暇の関係を探ることで、アリストテレスの政治哲学ないし教育哲学における観想活動の明確化を試みた。彼にとって公教育とは、それを受ける者が余暇に観想活動を行えるようになるものでなければならない。そして観想活動とは、認識論のコアたる知性が実行するものである。したがってこの探究は、本研究を政治的・教育的場面に拡張・応用するものと看做される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感覚や表象について直接論じることはできなかったが、それらを基盤とし、認識の成立に不可欠な想起と記憶についての研究成果を査読付き英語論文として発表できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度(3年目)は、感覚と表象についての研究成果を論文として発表すること、および、「知性」概念の考察を進展させることを目指す。
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Causes of Carryover |
端数を次年度に使用することとしたため、次年度使用額が生じた。この余剰金額については、次年度の物品費や旅費に充てることを計画している。
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Research Products
(3 results)