2021 Fiscal Year Research-status Report
A new phenomenological approach to religious space: The logos of Amida faith in Kyushu
Project/Area Number |
21K12850
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
リュウシュ マルクス 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (40881488)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 阿弥陀信仰 / 長崎 / 佐賀 / 巡礼 / 山岳信仰 / アドルノ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、九州の阿弥陀空間を明らかにするために、2年に亘りフィールドワーク調査を行い、それらの調査結果と関連した文献分析の上、新たな空間学的分析モデルを導入し、九州の阿弥陀信仰図を作成する。2021年度は、2回フィールドワークを行なった。1回目は肥前(長崎・佐賀)における調査(3泊4日)で、2回目は肥後(熊本)でのフィールドワーク(2泊3日)であった。長崎での対象は、長崎市内にある長崎四国八十八ヶ所霊場の札所および黄檗宗の興福寺、そして佐世保市にある大智院や福石観音清岩寺であった。佐賀では、黒髪山周辺でフィールドワークを行い、武雄図書館で史料を収集した。台風の影響により叶わなかった基山での調査は、2回目のフィールドワークに延期し、そのときの熊本県での対象は、八代市・熊本市および人吉市と球磨郡地域の阿弥陀寺院であった。熊本県は、浄土真宗寺院の数が他の宗派の寺院と比べ圧倒的に多いため、その寺院の空間的役割と隠れ念仏史跡の現代的意義に注目した。 コロナ感染症拡大により、現地での調査の実行は難しかったため、1点を除き、2021年度の学会発表では、理論的な観点と文献分析に注目した。1つの観点は、空間分析において欠かせない「地図」のレトリックであり、具体的には参詣曼荼羅を取り上げ、そこに描かれた宗教空間と現在の境内とを照らし合わせ、地図に表現される教学的なコンセプトを明らかにした。他にも、空間と教学との関係について3つの発表を行った。もう1つの観点は、宗教音楽である「声明」が空間創造の過程において果たす役割であり、そのためにアドルノの音楽論を利用し、現代の声明および儀礼の状況と空間変貌の教学的意味について考察した。1つの発表は、肥前の阿弥陀空間のフィールドワークの成果に注目したもので、現在の超宗派的宗教空間である巡礼と真言宗の山岳空間を分析し、それにおける阿弥陀の役割を明瞭にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度内に行えたフィールドワークの数は、コロナ感染症拡大と台風の発生により予定より少なかったため、現地のデータ収集は少し遅れている。その代わりには、理論的な側面および文献分析を予定より早く進めた。九州の阿弥陀信仰地図を作成するにあたって必要なデータは、相変わらず2年以内収集する予定であるが、2021年度は調査範囲の50%に満たさなかったため、次年度はフィルドワーク実行の頻度を上げる。 本研究のベースの1つであるフィールドワークが遅れたため、アプリの作成も少し遅れているが、研究計画書になかったUnityによる3Dモデルの作成を開始し、研究成果の新たな公開方法を試み、2023年度に向けて準備している。当初予定していた講演会の開催は、調査の遂行において困難だと判断したため、動画配信という形に変え、現在は動画作成の準備を進めている。動画配信で期待する効果は、講演会より幅広い視聴者層と視聴時間の自由による視聴者数の増加である。研究計画では、6回の講演が予定されていたが、その代わりに15回の動画を配信し、本研究の成果として九州の阿弥陀信仰の全体像を一般者向けに紹介する予定である。各回のテーマを決め、フィールドワークの実行により毎月の動画アップロードが確保出来次第、次年度の早い段階から動画シリーズを開始する予定である。 講師の招待がなくなったため、代わりに図面の作成を予定より早く依頼し、次年度も研究計画より多数多種な空間図の作成を依頼する予定である。図面は、論文とアプリに掲載する。以上の観点から、コロナ感染症拡大などによって予定より遅れている部分があるものの、その代わりに早めに進められた部分もあるため、プロジェクト全体の進捗状況を「おおむね順調」とする。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、プロジェクト期間中に遂行予定である残りのフィールドワークを実行する。九州の北西地域の調査が終了したため、北東・南九州を対象にする。フィールドワークの遂行に伴い、随時アプリに情報を追加し、歴史史料および教義関連の資料の収集と分析を行う。 動画シリーズの開始は夏を予定しており、動画の言語は日本語にし、英語とドイツ語の字幕をつける。その動画シリーズは、当初計画していた講演集の代わりに作成する。講演集も一般者向けの出版物を予定していたが、上述の理由から多種多数の視聴者を可能とする動画配信に変更した。シリーズの各回の内容は次のとおりである:概説、特定の国に注目した回(「肥前」など、全9回)、国境の横断的テーマ(「山岳」など、全4回)、まとめと結論。 図面作成依頼は、前年度と同様に境内のみではなく、広範囲の地図も作成し、それをもとに「宗教空間」の新たな定義を考察し、最終年度に提示する予定である。そして当初、研究計画書になかったUnityによる3Dモデルを作成し、研究成果の新たな公開方法を試み、最終年度に向けて準備する。 次年度は、情報収集が中心であるため、動画配信という形で成果を発表するが、学会発表での研究成果公開は3年目を中心に行う予定である。本プロジェクトの成果を包括的にまとめる学術出版物は、最終年度内に原稿を仕上げる予定である。
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Research Products
(7 results)