2022 Fiscal Year Research-status Report
近世日本における朱熹『家礼』の実践と影響に関する研究―儒式喪祭礼の多角的展開
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21K12863
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松川 雅信 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (00822834)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 日本思想史 / 日本近世史 / 『家礼』 / 儒教儀礼 / 闇斎学派 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、宋代中国で成り、その後の東アジア世界に多大な影響をもたらした、朱熹(1130~1200)の著した冠婚喪(葬)祭礼の実践マニュアル書、『家礼』の近世日本における多角的展開の様相を把握しようとするものである。とりわけ、喪祭礼部分に着目した考察を進める。 従来、近世日本の儒教には『家礼』の影響は全くなかったものと考えられてきた。すなわち、近世日本儒教は祭祀・儀礼・宗教等の側面を欠落させた、学問・道徳としての「儒学」に過ぎなかったものと長らく考えられてきた。それに対し近年では、新資料の発掘が進んだこともあって、近世日本の儒者達も『家礼』に載る喪祭礼に多大な関心を示し、現実に実践していた例も決して少なくなかった事実が指摘されつつある。従来の通説は大幅に覆りつつあるといってよい。 しかしながら、未だ『家礼』が近世日本に与えた影響の全容が解明されたとはいい難いのが現状である。そこで本研究は、儒者以外の様々な対象にも視野を広げることにより、近世日本における『家礼』の影響・実践の実態を可能な限り詳細に明らかにしようと試みる。具体的には、闇斎学派と関わりを有した武士・公家・神職等を始点とし、そこから徐々に対象を広げていく形で検討を進めていく所存である。 今年度はこうした視座のもと、論文「平泉澄の山崎闇斎研究と「日本精神」」、口頭発表「近世日本の儒教と葬送」に加え、新発田藩学関連資料の収集などといった成果をあげることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は本研究に関わる成果として、論文1本(「平泉澄の山崎闇斎研究と「日本精神」」)、口頭発表3本(「阿部吉雄の山崎闇斎・李退渓研究」「近世日本の儒教と葬送」「戦時下の山崎闇斎・李退渓研究」)がある。また、コロナ禍の規制が緩和されたこともあって、未刊行資料の収集も行うことができた。その他にも、本研究と間接的に関わる成果をいくつかあげることができた。概して順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、新発田市立図書館や名古屋大学法学図書館に所蔵されている新発田藩学関連の資料を大量に収集することができた。闇斎学派の関与が強かった新発田藩では、『家礼』の影響が濃厚であった可能性が想定される。そこで次年度以降は、それら収集済資料の読解を通じた検討を進めていく所存である。また、今年度に口頭発表を行った内容についても順次、論文化していくことを目指す。
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Causes of Carryover |
かなり緩和されたとはいえ、未だコロナ禍の影響を完全に脱し切れず、そのため資料調査を十全に行うことができなかった。そのことが次年度使用額の生じた理由である。そこで次年度は、資料調査を十全に行うことによる使用を計画している。
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