2023 Fiscal Year Annual Research Report
パリ音楽院ピアノ科試験曲目データベース補完とオープンアクセス化(1842-89)
Project/Area Number |
21K12867
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 泰 (上田泰史) 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (90783077)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | パリ国立音楽院 / 定期試験 / レパートリー / ピアノ教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、パリ国立音楽院のピアノ科における定期試験のうち、鍵盤楽器学習クラスと予科で行われた定期試験における演奏曲目を対象として、1)試験官メモに記録された曲目の転写作業、および2)統一標目の作成を行った。作業は年度内に完了し、これにより本課題で対象とする範囲のデータベース補完作業が完了した。データベースは、ピティナ音楽研究所の協力を得て整備を進めてきた既存の定期試験曲目データベースに統合する形で公開した(https://enc-paris-conservatory-exam.piano.or.jp/)。 研究期間全体を通して、演奏曲目不明の生徒を含め、のべ5608名の記録を入力した。このうち、作曲家名が同定できたのはのべ2752名、演奏曲目のジャンルが同定できたのは2639名である。曲目記録の多くは1870-71年度以降に集中している。1842年から1889年の期間における作曲家の出現頻度は、割合の高い順にフンメル、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ウェーバー、フィールド、ショパン、その他、である。一方、ジャンル別では、割合の多い順に協奏曲、ソナタ、ロンド、性格的小品、フーガ、舞曲、練習曲、幻想曲、その他、である。 ジャンルを作曲家別に見ると、協奏曲で多く演奏されたのは、順にフンメル、フィールド、エルツ、メンデルスゾーン、モシェレス、リース、その他である。この傾向は、「華麗な」協奏曲を重視するパリ音楽院修了選抜試験課題曲の傾向に一致している。一方、ソナタではベートーヴェンが最も多く、ウェーバーとフンメルが続く。ベートーヴェンは、協奏曲ではなくソナタにおいてピアノレパートリーの基礎になっていたことが浮き彫りになった(上記データの詳細は「研究成果報告書」を参照のこと)。
|