2021 Fiscal Year Research-status Report
犯罪映画の快楽:大衆娯楽映画としての戦後犯罪映画の製作と鑑賞に関する総合的研究
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21K12904
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
ク ミナ 明治学院大学, 文学部, 研究員 (90868978)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ジャンル映画 / 犯罪映画 / 東映 / 文学作品の映画化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、研究成果の発表自体は達成されなかったが、東映太秦映画村・映画図書室で1950年代に東映で製作されたおよそ80本の犯罪映画のプレスシートを調査するなど、研究の対象となる作品の一次資料の調査を行った。これによって、フィルムが現存していない作品、あるいは上映素材へのアクセスが容易ではない作品に関する情報を得ることもできた。他方、今後さらに研究を進めるべき残された課題もある。調査の結果、1950年代半ば以降、映画会社が行う犯罪映画の企画、宣伝の仕方に変化があらわれることは確認できたが、この時期を映画史的な観点から考察するためには広範囲にわたる調査が必要である。このような移行を促した背景に、松本清張に代表される同時代の文学やアメリカ映画の影響、映画の表現規制など、映画内外の要因があったと推察されるが、2021年度に行った調査を研究成果として実らせるためにも、各々に関する綿密な検討を先行する必要があるだろう。そこで2022年度には、まず文学作品のアダプテーションに焦点を当てて研究を行うことを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまで先行研究があまり行されてこなかった作品群を分析の対象としているため、2021年度には一次資料の調査に集中した。しかし研究論文としてまとめるためには資料を収集し整理するだけでは不充分であるため、研究方法および方針の見直しを行った。なお現在、他のテーマに関する書籍の執筆依頼を受け、本研究に割ける時間が少なくなってしまい、研究が遅れている。 このように2021年度には当初予定していた作業を順調に進めることはできなかった。しかし現在執筆中の原稿で映画の音楽効果について分析しており、本稿で採用した方法論は、音響効果に用いて緊張感を追体験させる犯罪映画を分析する際にも有効に活用できると考えている。その方法論を生かして、文学作品のアダプテーションについて研究する2022年度には、映画ならではの視覚的・聴覚的表象から対象時期の犯罪映画の美学的な特性を見出し、その成果を具体的な論文として発表していけるように研究を進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿った調査を行いつつ、2021年度末から実施している異なるアプローチでも研究の達成を目指す。具体的には、50年代半ば以降の犯罪映画に変化をもたらした要因を解明すべく、同時代のミステリー文学に関する先行研究を整理し、そこから得られた示唆をもとに、メディア横断的に犯罪映画を分析することが本年度の一つ目の目標である。2022年6月に学会大会でそれまでの研究成果を発表する予定であり、その論考を発展させて論文として発表できるように研究を進めていきたい。なお、1年目に調査を行った東映の犯罪映画についても調査を継続する予定だが、より俯瞰的な視点から対象作品を捉えるべく、本年度には同スタジオの主力路線だった時代劇に関する調査と先行研究の整理を行い、今後論考として発表できるようにノートをまとめていくつもりである。
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