2022 Fiscal Year Research-status Report
「抵抗詩人」の自己像と歴史化の再検討ーー金子光晴・山之口貘・許南麒と戦後詩壇
Project/Area Number |
21K12914
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
逆井 聡人 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50792404)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ポストコロニアル批評 / 文学批評 / 戦後詩 / 在日朝鮮人文学 / 抵抗運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクトの二年目である2022年度は、引き続き抵抗詩人の調査分析を進めつつ、第一年度で得た成果を踏まえて、より広い文脈――同時代の文壇状況と政治・社会状況の検討を開始した。沖縄文学の代表的な詩人である山之口貘の自筆原稿の調査と、米軍統治期の沖縄の状況をより詳しく知るために、返還された元基地施設等を見学するためにフィールドトリップに出向いた。 在日朝鮮文学に関しても、ハンセン病を患った歌人・金夏日や詩人の香山末子の作品を分析し、その成果を韓国・淑明人文学研究所が発刊する雑誌に査読論文として掲載された。 金子光晴に関しては、初期詩集の中でも研究が十分なされているとは言えない関東大震災直後の詩編について調査し、分析を進めている。その成果は、三年目に発表する予定がある。 また、引き続き研究会を開催し、国内外の最新の文学論を取り上げて、国内外の研究者と意見を交換する場を持った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金子光晴、山之口貘、許南麒の三人の詩人や彼らが活躍した同時代の文化状況に関する資料収集や作品分析を進めながら、より広い視野で「抵抗」のあり方を考えられるよう、ハンセン病文学や戦後の新世代の詩人たちへの理解を、研究会やシンポジウムへの参加、登壇を通して深められた。 また、当年度の目標としていた「海外の学会やシンポジウム等の機会を活用して、英語での成果発表を進めていく」ということも、実施できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
三年目は、より積極的に海外の国際学会でパネル発表や講演を行い、研究成果の国際発信に努めていく。既に、二つの国際シンポジウムでの登壇と、一つの国際学会での研究発表が予定されている。また、これまで構築した国内外の研究者ネットワークを活かして、東アジアだけでなくヨーロッパでも、より普遍的な問題と接続させて本プロジェクトの問題意識を提示することで、研究者の関心を得たいと考えている。
|
Causes of Carryover |
2022年度はコロナによる海外渡航の規制が引き続き実施されており、申請時に予想したほど国外への出張や、海外研究者の招へい等ができず、旅費が使いきれなかった。 三年目や四年目は、規制が解除されたために、当初想定していた海外出張や国際シンポジウムの開催が可能になるため、今回生じた繰越金額を含めて旅費として使用する計画がある。
|
Research Products
(2 results)