2021 Fiscal Year Research-status Report
江戸後期における明清詞論の受容に関する研究―野村篁園とその門人たちを中心に―
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21K12916
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
陳 竺慧 大阪大学, 文学研究科, 助教 (50881281)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 野村篁園 / 題画詞 / 昌平黌 / 漢籍受容 / 日本填詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、昌平坂学問所(=昌平黌)の教授であった野村篁園とその門人たちが明清時代の詞論をいかに受容し、填詞創作に反映したのかを明らかにするものである。江戸後期の詞人とほぼ同時代の中国詞論の関わりを明確に指摘することによって、日本の詞を日本漢文学史および東アジアの文化交流史の中で正しく位置づけることを目的とする。 研究計画に基づいて、2021年度は主に以下の作業を行った。 まずは国立公文書館内閣文庫に現存する昌平坂学問所旧蔵の詞籍ついて調査・収集した資料を整理し、論文「昌平坂学問所における舶来詞籍の受容」(『待兼山論叢 文学篇』第55号)を発表した。当該論文では詞籍の入庫時期、書入れ、付箋(不審紙)および野村篁園の集句詞等について考察し、昌平黌における填詞受容の実態を書誌学的観点から明らかにした。 また、題画詞を手かがりに日本の詞に関連する文献を検討し、日本近世における填詞受容の特徴について考察した。その初歩的な成果として「淺析江戸時代題畫詞的出現與發展(江戸時代における題画詞の出現と展開について)」を国際学会(2021台灣與東亞的文本・圖像・視聽文化國際學術論壇)にて発表した。当該発表では現存する江戸時代の題画詞の数、題材、作者、作風等について分析し、文人画の流行との関連を指摘した。その後はさらに二人の作者に焦点を絞って「題画詞から見た日本近世における填詞の受容についてー野村篁園と田能村竹田を中心にー」を日本中国学会第73回大会において口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時に掲げた課題の一つ「昌平黌に所蔵されていた詞籍の調査」に関しては研究実績の概要でも述べたように、論文「昌平坂学問所における舶来詞籍の受容」を発表するなど、一定の成果を上げることができた。 また、江戸時代の題画詞を調査することで、当時の文人がいかに明清の芸術論(文学論、音楽論、書論、画論など)を受容し、どのような詞学観を形成したのかについて知見を得て、2つの学会発表を行うことができた。 以上を踏まえて、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
野村篁園とその門人たちの作品はほとんど刊行されておらず、写本のまま各所蔵機関に分散して蔵されている。そのため、次年度は新型コロナウイルスの影響で見送った資料調査を行い、現地に赴いて実物を確認し、写真撮影または複写サービスを通して基礎データを整備する。 また、野村篁園らがいかに明清詞論を創作に反映したのかという問いに答えるため、基礎作業として訳注を作成していく必要がある。これは研究開始時に掲げた課題の一つ「野村篁園とその門人たちの詞の訳注」であり、次年度も引き続き行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響でオンライン以外の学会参加および各地への資料調査を見送ったため。次年度は一部をデータベースや書籍などの購入にあたり、学会参加や資料調査などについては感染状況や社会情勢の変化等を踏まえて適切に対応する。
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