2021 Fiscal Year Research-status Report
1950-60年代日本の「文学と革命」をめぐる批評言説の変容と展開
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21K12922
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
木村 政樹 東海大学, 文学部, 講師 (90869679)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文学と革命 / 批評言説 / 文化運動 / 概念史 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
1950-60年代の「文学と革命」をめぐる批評言説についての研究を進めた。また、それと同時に、その前後の時代の批評言説も歴史的な視座から位置づけることを試みた。「国民文学」概念を中心的な対象とした調査に基づく研究については、2022年度以降に論文化することを目指している。 研究成果の一部については、論文として発表した。「一九五〇年代の埴谷雄高における結核と文学」(『昭和文学研究』第84集、2022年3月)では、1950年代の埴谷雄高の批評言説を考察した。また、「将棋と革命――野間宏「暗い絵」論」(『湘南文学』第57号、2022年3月)では、1946年発表の『暗い絵』を分析したが、その際、この小説について論じた1950年代以降の先行批評についても論及した。 また、これまでの筆者の主な研究をまとめて、『革命的知識人の群像 近代日本の文芸批評と社会主義』(青土社、2022年2月)として刊行した。本書は博士論文をもとに増補・加筆修正したものであるが、そのなかには1950年代の本多秋五やその周辺の文芸批評についての考察も含まれている。また、近年の知識人関連語群についての考察として、「「知識人」と「知の巨人」 二〇二一年、立花隆から考える」(『ユリイカ』第53巻第10号、2021年9月)を発表した。 研究発表としては、「雑誌『先驅』と知識階級論」(20世紀メディア研究所、オンラインでの報告、2021年7月)で、雑誌『先驅』を対象に戦前の新人会における知識階級論について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染拡大の状況が不安定であったこともあり、予定していた調査が行なえなかったといったことはあったが、そうしたなかでも可能な範囲で研究を進め、年度内にその一部を論文化することができた。総合的にみれば、おおむね順調に進展しているといえる。「国民文学」概念については、一次資料の量も多く、先行研究も充実しているため、2022年度以降に論文化することを目標とする。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染拡大の状況にもよるが、2022年度は当初の予定通りの調査のための出張を行ないたい。それが困難になった場合については、東海大学付属図書館や研究室の蔵書を中心としつつ、アクセス可能な範囲の資料をもとに成果を生み出すことができるよう、計画を臨機応変に変更していく。2022年度は「近代文学」概念を中心に調査を進めていくが、『近代文学』派周辺の批評言説についてはこれまでも考察してきており、今後も順調にいけば新しい研究の成果を発表できると見込んでいる。
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Research Products
(5 results)