2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K12924
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Research Institution | Tomakomai National College of Technology |
Principal Investigator |
時田 紗緒里 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 講師 (00898067)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日尾邦子 / 近世女性文学 / 和文 / 漢学 / 和学 / 紀行文 / 日記文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
日尾邦子の旅日記『江島鎌倉紀行』についての研究を行った。『江島鎌倉紀行』本文は、日本女子大学本『江島鎌倉紀行』を翻刻して用いた。本書は邦子自筆資料である。 まず、旅の経緯として、夫・荊山の教え子である戸塚英斉という人物の申し出で旅が実現したことが判明した。英斉は旅にも同行し、自身の故郷である江島・鎌倉の案内を行っている。現在までの調査では英斉については詳細が判明していないため、今後も継続して調査する予定である。 執筆動機については、跋文に拠れば天気に恵まれなかったことで主要目的であった江島と鎌倉は一日半しか観光ができなかったため、再訪までの回顧録として「日記めきたる」ものを書いたという。また、同跋文には『鎌倉志』に影響を受け、記された旧所名跡を辿るものであったことが記されていた。邦子が自ら述べる通り、『江島鎌倉紀行』は『鎌倉志』の影響が大きく、取り上げられている名所旧跡については『鎌倉志』を参考にしているものが多数ある。①『鎌倉志』を記事内容および表現までそのまま利用(引用)するもの、②『鎌倉志』に詳細が記されていて、『江島鎌倉紀行』では省略をして掲載するもの、二通りの利用方法が見られた。 そのほか、邦子の紀行文の特徴として、自作の和歌(贈答歌を含む)が見られ、邦子二十五首、荊山十八首、英斉五首、また漢詩が荊山五首、英斉一首掲載されている。中でも、荊山の漢詩を吟じて、邦子はその漢詩の内容を理解した上で詠んだと思しき和歌があり、邦子の詠歌能力と共に、漢学への素養をうかがわせるものとして重要である。 以上の内容について、「日尾邦子江島鎌倉紀行」と題して論文を執筆し発表した。(『国文目白』第六十一号六〇~六十九頁、二〇二二年二月)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、学術機関に赴いて所蔵資料を調査する必要がある。新型コロナウイルス感染症の拡大のため、飛行機移動を伴う調査を行えなかった。そのため、予定していた調査の実施を延期し、研究についても延期せざるを得なかった。 しかしながら、邦子の紀行文「江島鎌倉紀行」の研究については進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
延期した資料調査を行う。その上で、『花月園謾筆』(随筆)の翻刻を行い、その内容を明らかにすると共に、邦子の伝記研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた資料調査ができず、旅費を使用しなかった。また、資料複写および関連文献購入についても資料調査した上で行うため、使用しなかった。次年度は、今年度できなかった資料調査を行う。年間6回以上の飛行機移動を伴う出張を予定している。
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Research Products
(1 results)