2022 Fiscal Year Research-status Report
後期読本ジャンルの確立と草双紙との関連についての研究-敵討物を中心に-
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21K12926
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
伊與田 麻里江 明治大学, 文学部, 助教 (40884549)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本近世文学 / 読本 / 高井蘭山 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、敵討を題材とした(敵討物)草双紙との影響関係を通して、読本の成立過程を考究することを目的とし、2022年度は、文化1、2年の作品を対象に、草双紙と読本の比較を進める予定であった。ただし、昨年度に引き続き新型コロナウイルスの流行によって業務が増え、また、遠方の図書館などの訪問も難しい状態が続き、書誌調査や資料の閲覧、収集が十分にできなかった。そのため、まずは近隣の国立国会図書館、国文学研究資料館等を中心に資料の閲覧、収集につとめ、作品分析に努めた。 まず、読本における敵討物流行の展開を解明するため、山東京伝の読本『復讐奇談安積沼』を契機に流行した「復讐(敵討)」「奇談(怪談)」の両語を角書に持つ作品を網羅的に調査した。その結果、こうした読本作品の担い手が、①京伝や馬琴といった江戸の作家(文化1-2)、②上方の作家(文化3-5)、③素人作者(複数の作品を創作した形跡が確認できない作家。文化5以降)と移り変わっていることがわかった。このことが、読本ジャンルの隆盛につながったことは疑いない。 この点について、上記①②の間に位置する作家高井蘭山の『報讐奇話那智の白糸』に着目し、作品分析を進めた。蘭山は江戸の作家であるが、従来は上方の絵本物読本を参考に作品創作しているとされてきた。しかし、当該作品は江戸発祥の敵討物読本を参考に創作されており、この時期、江戸の敵討物読本が、読本の手本として認識されていたことがわかる。このことについては、「高井蘭山『〈報讐奇話〉那智の白糸』と『月氷奇縁』」(『読本研究新集』第14集)にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
引き続き、新型コロナ感染症の影響により、遠方の所蔵機関等への調査がはかどらず、また、ハイブリット等の対応のために業務量も増え、研究が思うように進捗しなかった。ただし、近隣機関の資料収集、および作品分析については進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度、2022年度に進められなかった遠方の各所属機関等での調査を進める。市の上で、本年度進めた近隣機関における資料収集、作品分析の結果を踏まえ、寛政から享和・文化1、2までの草双紙と読本の関係について、調査結果をまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により、所蔵機関への旅費を使用しなかったため。
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Research Products
(1 results)