2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K12928
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
野村 亞住 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 講師(任期付) (30710561)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 近世文学 / 俳諧 / 季語 / 式目 / 連句 |
Outline of Annual Research Achievements |
式目の嚆矢とも評すべき松永貞徳の『俳諧御傘』(慶安四年1651)は、様々な季寄せ・ 歳時記類、式目作法書類、俳論書で取り上げられてきた。本研究では、そのなかでも北村季吟著の季寄せ『増山の井』(寛文七年1667)における「貞徳」受容に注目し、受容の実態と実際の俳諧での運用を調査する。本季吟の著作物のなかでも、とくに『増山の井』での「貞徳」の引用回数は他の俳書を圧倒する。『増山の井』は、「四季の詞」と「非季の詞」について必要箇所に注記がなされる辞書的意義を併せ持つ季寄せで、後の季寄書類の基準と評される。本研究期間では、まずは、この『増山の井』における「貞徳説」が何によるものなのか『俳諧御傘』との検証から着手する。 そこで、研究の初年度にあたる2021年度は、研究の準備として、比較の対象となる俳書各書の翻刻およびテキスト化を行い、データベースの作成につとめた。 具体的には、『俳諧御傘』や『山の井』『増山の井』『俳諧埋木』『俳諧小式』など、季吟系統の式目作法書のデータベース化である。データベース作成にあたっては、すでにテキスト化されている資料も合わせて、適宜、清濁についても字義の確認も含めて当時の辞書類や他の式目作法書・歌学書も用いて検討を行った。また、今後分析のために、抽出したり、比較したりするために必要な、分類項目を作成しつつ進めている。 基礎となるテキスト化を慎重に行う必要があったため、初年度では『俳諧御傘』のデータ化が完了していないが、他の俳書類のデータベース化には目処がたった。そこで、『増山の井』における「貞徳説」箇所の抽出を行い、『俳諧御傘』と対照しての分析を進めた。「貞徳説」と明記されない箇所での類似箇所等の割り出しについては、類似基準を策定中である。他の俳書との兼ね合いもあるため、これは次年度以降のあらたな課題の一つとして進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間初年度は、今後の分析の基礎となるデータベースの構築を主として行った。すでに作成している芭蕉連句や季吟門のデータベースとの照合も視野に、分析項目になりうる観点を抽出しつつ進めている。 なお、テキスト化を慎重に行う必要があったため、初年度では『俳諧御傘』のデータ化が完了していない。これは次年度引き続き進めるものである。 初年度は、他の俳書類のデータベース化に目処がたったたところで、『増山の井』における「貞徳説」箇所の抽出を行った。『俳諧御傘』と対照しての分析を進め、データベースでの分析項目の見直しを並行して実施している。「貞徳説」と明記されない箇所での類似箇所等の割り出しについては、類似基準を策定中であるが、他の俳書との兼ね合いもあるため、今後ひきつづいての課題として進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度にひきつづき、テキスト化およびデータ化を進めつつ、分析を行い、それをデータベースに還元していくことで、データベースの増強に尽力する。 分析に際しては、初年度に抽出した『増山の井』における貞徳受容の内容についての相対化を図るため、同じ句季吟の『山の井』や『俳諧埋木』など、『増山の井』以前に著された著作物、および師弟関係にあった山岡元隣の『誹諧小式』(寛文二1662奥)などに範囲を拡大して分析を行う。とくに、山岡元隣の『誹諧小式』にみる解説手法は、項目毎に引用と私見を分けて整理されたもので、季吟のそれと近似する。この中にも「貞徳」の説がたびたび引用されており、貞徳→季吟→元隣と直接貞徳の教えを介さない第二次世代への受容の実態として参考にする。 また、「貞徳説」と明記されない箇所での類似箇所等の候補箇所の割り出しを行い、どの程度参考にされたか、という判断基準の策定を行うことで、「受容」であるか否かという基準の明確化を計りたい。
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