2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K12930
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
馮 超鴻 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助教 (30879705)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 玉藻前 / 狐妖 / 読本 / 『絵本三国妖婦伝』 / 中国古典小説 / 中国講史小説 / 耆婆 / 比較文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
狐変妖婦・玉藻前の物語は室町時代の御伽草子「玉藻の草子」まで遡るが、江戸期に至ってまたさまざまな変化を成し遂げた。江戸期の作品において、玉藻前説話の集大成とも称される二つの読本が存在している。本年度は主に、その一つである読本『絵本三国妖婦伝』について二つの方面から掘り下げた。 1、『絵本三国妖婦伝』の形成についてである。作者・高井蘭山が著わした序文の中で、「愚 觚を操りて修飾し、北馬子 丹青を以て潤色す」という。ここにおける「修飾」は、文章の加工潤色や推敲の意味を持ち、蘭山が先行する狐譚を利用し、自ら改編を施したことを意味している。申請者は、この「修飾」に着眼し、蘭山が如何に改編を行い、作品に特色を与えたかを浮き彫りにした。具体的には、蘭山がおおむね実録的写本『三国悪狐伝』と『通俗武王軍談』に依拠しながら、先行作品と異なる、王威に服従し陰陽師・安倍泰親の法術に対抗できない無力な玉藻前の形象を新たに作り出した点などが挙げられる。 2、当該作品における「耆婆による狐退治」話型についてである。江戸期の玉藻前を題材とした作品群において、名医・耆婆が狐変妖婦である華陽夫人を退治し、天竺国を累卵の危機より救ったヒーローとして描かれている。仏典において、耆婆は人間の五臓六腑を見透かす薬王樹を持つ人物として知られているが、狐妖退治まして玉藻前の退治とは関わらない。申請者は、なぜ江戸期の玉藻前説話には狐妖を退治した耆婆が登場するのか、耆婆がどのように盛り込まれてきたかについて分析を試みた。具体的には、『絵本三国妖婦伝』における耆婆の物語の祖型を勧化物『勧化白狐通』に求め、『勧化白狐通』の作者が中国の狐話集『狐媚叢談』の影響を受けて、耆婆が持つ薬王樹に狐妖退治の効能を与えたと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一時期遠方にある資料の調査ができなくなったため、予定より少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に変更はなく、中国古典小説の伝来の実情、実録的写本の伝本の調査、作品の比較分析を中心として研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、本年度にできなかった資料調査を次年度に行うため。
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Research Products
(3 results)