2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K12941
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩崎 華奈子 九州大学, 人文科学研究院, 助教 (30822887)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 封神演義 / 中国古典小説 / 明末清初 / 花案 / 戯曲 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は①『封神演義』電子テキスト入力・修正作業、および②周之標『呉姫百媚』に関する研究を実施した。 ①『封神演義』の本文分析を効率的に実施するための準備として、本文の電子テキスト化を行っている。別の科研費課題(19K20807)において、現存最古とされる舒本およびその他複数の版本による校勘を実施し、本年度、その課題が完了した。本研究課題ではその成果をもとに電子テキストを作成する。校勘の結果より、本課題で作成する電子テキストは原則として舒本を底本とする方針を固め、入力・修正に着手した。 ②『封神演義』の序文撰者の一人である周之標が編纂した『呉姫百媚』は、明の万暦45年(1617)に編纂された、蘇州の妓女品評である。本書は中国国家図書館と名古屋市蓬左文庫にのみ存する稀覯書である。国家図書館蔵本は『中華再造善本』に収録され、また国家図書館のホームページ上で書影を見ることできるが、本文や図像に複数の欠葉がある。これに対し蓬左文庫蔵本は完本である。とくに「状元(第一位)」を与えられた妓女王賽の部分が国家図書館蔵本では全て失われている。本年度は蓬左文庫蔵本の複写を入手し、王賽の記述を繙いた。その結果、周之標と王賽について新たな知見を得ることができた。さらに彼らを題材とした戯曲が存在することも発見した。今後、戯曲の製作者・制作背景・時期、蓬左文庫蔵本の書誌的研究も行い、次年度内に学会発表と論文により公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの流行により、別の研究課題において昨年度完了予定だった『封神演義』本文校勘が今年度に継続となったため、電子テキスト化の作業着手が当初の計画よりも後ろ倒しとなった。しかし、出版背景に関わる周之標の事績研究において大きな進展があったことから、全体的には概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本文の電子テキスト入力・修正を継続する。次年度内に第30回までの電子化完了を目標とする。 また、周之標と王賽に関する研究成果について、次年度内の公表を目指して詳細な検討と追加調査を実施する計画である。 今後も国外への移動は困難と予想されるが、国内の文献調査が可能であれば積極的に行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、本課題の研究期間の初年度にパソコン・スキャナ・プリンター等の高額機器、および多数の書籍を購入する予定であったが、新型コロナウィルスの世界的流行による半導体不足、物流遅延などが重なり、電子機器や輸入書籍の購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。 次年度にはこれらの物品購入を再度検討し、可能な限り早期に発注を行うことで、年度内に必要な機器・書籍を入手できるよう努める。
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