2023 Fiscal Year Research-status Report
1970年代イギリス児童文学における移民作家と白人労働者階級の研究
Project/Area Number |
21K12948
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
瀧内 陽 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (00846701)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | イギリス児童文学 / マイノリティ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イギリス児童文学における人種的多様性と多文化主義の発展を、移民と白人労働者階級に注目して明らかにすることを目的としている。2023年度は、まず、昨年度に引き続きPetronella Breinburgに関する資料とイギリスにおける移民、黒人児童文学についての資料を集め、関連資料を読み進めて事実関係の把握と論文作成の準備を行った。海外でBreinburgに関する資料の公開や研究が進みつつある状況もあり、経歴等の基本情報は揃い、また、Breinburgのヤングアダルト小説Us Boys of Westcroftの作品分析も順調に進んだ。さらに、イギリス児童文学の全体像と1970年代前後にイギリスで育った黒人少年の経験を理解するため、同時に作品の比較対照を行い理解を深めるために、広範なイギリス児童文学作品に目を通し、特に移民第2世代の代表的作家、Benjamin ZephaniahやAlex Wheatle等の研究も行った。また、Breinburgは大人向けの小説ではレズビアンやゲイを主人公に据えることが多いため、LGBTと文学についても調べている。2023年度中のイギリスでの資料調査を見合わせたため、論文の完成は2024年度にイギリスでの研究を行った後でとなるが、Us Boys of Westcroftに関する論文の執筆見通しは概ねついた。また、新型コロナウイルス流行の影響を受けて研究計画を修正、白人労働者階級作家、特にBreinburgの担当編集者であり、1970年代に編集者として黒人・アジア系作家の発掘にたずさわったAidan Chambersの研究を優先させていたが、Chambersの作品に描かれる白人労働者階級と高尚芸術についての論文を完成させて、2024年3月に国内学会誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概ね順調に進んでいるものの、新型コロナウイルス流行の影響を受けて2022年度、2023年度のイギリス出張を見合わせたため資料調査収集が遅れている。また、本プロジェクトの前の研究プロジェクト(研究活動スタート支援19K23045)が、新型コロナウイルス流行の影響で進捗が遅れたため、2022年度、2023年度にもこのプロジェクトの研究成果である英語論文の執筆投稿を行う必要があった。そのため、連鎖的に本プロジェクトにも影響して遅れの原因になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、まずはChambers作品についての投稿論文の査読結果が返ってきたら必要に応じて修正再投稿を行う。次にイギリスでの資料調査収集を行い、BreinburgのUs Boys of Westcroftに関する英語論文を作成する。2023年度までは海外出張自粛による資料不足を受けて当初計画を変更し、すでに資料が揃っている白人労働者階級作家Aidan Chambersの研究を優先して行ってきた。そのため、当初計画では2023年度までにUs Boys of Westcroftに関する論文を作成する予定だったが、代わりにChambersの作品についての論文を2023年度に完成させ、Us Boys of Westcroftについての論文は2024年度に作成する計画で進めている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行の直接的間接的影響を受けて、2022年度、2023年度はイギリスでの資料調査収集を見合わせ、その分を2024年度、2025年度に行う計画に変更した。主にこの旅費の分が次年度使用額となっており、2024年度以降のイギリスでの資料調査収集で使用する予定となっている。また、日本語論文を先に執筆し英語論文執筆を後ろ倒しにしたため、英文校正費用の支出等も2024年度以降を予定している。
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