2023 Fiscal Year Annual Research Report
北アイルランドにおける詩人のアイデンティティ:ジョン・モンタギューを中心に
Project/Area Number |
21K12954
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
西谷 茉莉子 京都府立大学, 文学部, 准教授 (90756355)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 北アイルランド / アイルランド / ジョン・モンタギュー / アイデンティティ / 北アイルランド紛争 / アイルランド語 / アルスター・スコッツ |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の2023年度は、主に三つの方向から研究を進めた。 まず、コロナ禍の影響で延期をしていたアメリカのニューヨーク州立大学バッファロー校での調査を実現させた。モンタギューの未刊行資料を閲覧し、The Rough Fieldに直接関連するものとして分類されている資料には全て目を通し、部分的に精査した。 二点目として、北アイルランド紛争との関連からモンタギューのアイデンティティの考察を行った。調査を進める中で紛争の重要性を再認識したため、当初予定していた研究の範囲を広げて不足分を補った。モンタギューの紛争への関与の度合いは、彼自身が述べていることから示される以上に強い。そのような観点から論考をまとめ、口頭発表を行った。 さらに、北アイルランドにおける第二次世界大戦の影響やその余波、および近代化について考察を深めた。これまで、The Rough Fieldのテクストの背景となっている文化的、社会的事象を一部特定できずにいた。だが、上記の調査によって、The Rough Fieldの解釈の裏付けとなる資料を複数見つけた。この調査結果をもとに論文を完成させ、2024年度中の学会誌への投稿を目指す。 研究期間を通して、次のことを達成した。(1)二言語話者ではないモンタギューのアイルランド語に対する態度を明らかにした。(2)北アイルランド紛争における両宗派間の緊張感の高まりの中で、プロテスタント出身の詩人であるジョン・ヒューイットとともに宗派を横断して行ったリーディングツアーの意義を再評価した。(3) 1960年代、北アイルランド社会において行われた地域開発や、第二次世界大戦にその基礎が敷かれた農業の近代化の文学的なインパクトを明らかにした。本研究事業の助成により、口頭発表2本、学術論文1本、共著(刊行予定)の一章分の執筆を行った。さらに学会誌への投稿を一本予定している。
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