2021 Fiscal Year Research-status Report
Gender, Sexuality, and Heterotopia in Neo-Victorian Literature
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21K12958
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
諏訪 暁 立命館大学, 言語教育センター, 嘱託講師 (20876809)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ネオ・ヴィクトリアン文学 / ヘテロトピア / ジェンダー / セクシュアリティ / クイア |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、フーコーが提唱する「ヘテロトピア」に関する文献調査を中心に研究を行なった。ヘテロトピアの特徴はひとつの空間の中にさまざまな(ときには相反する)価値観を並置することを可能にし、その空間内で新たなネットワークが形成される点である。また、ヘテロトピアの例としてフーコーが挙げている博物館のように、ヘテロトピアは過去と現在が混在する空間であることから、ヘテロトピアは直線的・一方向的ではない新たな時間軸・空間軸を提示するものである。また、ネオ・ヴィクトリアン文学は、ヴィクトリア朝時代を舞台としながらも現代的な視点から過去を再解釈・再考察しようとする行為を伴うものであり、ヘテロトピアとの親和性が認められる。 また、学術雑誌Humanitiesの特別号(タイトル:Neo-Victorian Heterotopias)の編集をMarie-Luise Kohlke(スウォンジー大学)、Elizabeth Ho(香港大学)と共同で務め、2022年1月にオンラインで出版した。特別号は9名のネオ・ヴィクトリアニズム研究者による論文(編集者3名の論文を含む)と編集者による序論で構成されている。序論では、先ほど述べたネオ・ヴィクトリアン文学とヘテロトピアの親和性について説明し、両者の相関関係に着目することで、両者に共通するユートピア性と他者性について明らかにすることができると論じた。同じく特別号に掲載された論文において、現代イギリスの女性作家サラ・ウォーターズのネオ・ヴィクトリアン文学作品における暗闇に着目し、登場人物が反家父長的、反異性愛規範的な欲望を追求する過程で暗闇が重要な役割を果たしていると論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度のヘテロトピアに関する文献調査を通して、ヘテロトピアの理論的位置付け、ならびにネオ・ヴィクトリアン文学とヘテロトピアとの親和性を明確にすることで、ネオ・ヴィクトリアン文学における女性とヘテロトピアの関係について体系的に解釈ができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究結果に基づいて、今後はネオ・ヴィクトリアン文学作品のテクスト分析を通して、現代の女性作家たちがジェンダー、セクシュアリティのあり方についてどのような問いを投げかけているのかを検証する。具体的には、文学作品における家庭内だけでなく監獄、精神病院、公園などさまざまな家庭外の場面での風景描写、心理描写に着目し、女性がどのような状況でヘテロトピア的空間を作り出し、男性優位主義的、家父長的、あるいは異性愛規範的な抑圧から自らを解放し、新たな自己像を確立しようとしているかを抑圧されている様子の描写と比較し分析をする。ネオ・ヴィクトリアン小説内においてどのような空間がヘテロトピアになりうるのか、またそれらのヘテロトピア的空間がどのように描写されているのかを検証することで、ネオ・ヴィクトリアン文学におけるヘテロトピアの重要性についての考察を深めたい。
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Causes of Carryover |
イギリスで開催される予定だった学会に参加予定だったが、新型コロナウィルス感染症の影響で開催が2022年9月に延期されたため、旅費の支出がなかった。次年度使用額は、学会参加のための旅費と文献資料の購入に充てる予定である。
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