2022 Fiscal Year Research-status Report
Gender, Sexuality, and Heterotopia in Neo-Victorian Literature
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21K12958
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
諏訪 暁 同志社大学, グローバル・コミュニケーション学部, 助教 (20876809)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ネオ・ヴィクトリアン文学 / ヘテロトピア / ジェンダー / セクシュアリティ / クイア |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究で、ヘテロトピアの特徴はひとつの空間の中にさまざまな(ときには相反する)価値観を並置することを可能にし、その空間内で新たなネットワークが形成される点である、と論じた。今年度はネオ・ヴィクトリアン文学作品のテクスト分析を通して、現代の女性作家たちはジェンダー、セクシュアリティのあり方についてどのような問いを投げかけているのかを、家庭内だけでなく、監獄、精神病院、公園など家庭外の場面での風景描写、心理描写を分析することで検証した。また、女性がどのような状況でヘテロトピア的空間を作り出し、男性優位主義的、家父長的、あるいは異性規範的な抑圧から自らを解放し、新たな自己像を確立しようとしているかを、抑圧されている様子の描写と比較し分析することで、ネオ・ヴィクトリアン小説におけるヘテロトピアの意義を論じた。 具体的には、イギリスの現代作家サラ・モスの小説Signs for Lost Children(2015)において精神疾患を持つ女性向けの保護施設がへテロトピアとしてどのように機能しているのか、またその空間が主人公アリーの女性としてのアイデンティティとどのような関連があるかを考察した。2022年11月19日に早稲田大学で開催された日本ヴィクトリア朝文化研究学会第22回全国大会において研究成果を発表し、先生方から貴重なフィードバックを得ることができた。 また、サラ・ウォーターズの小説Affinity(1999)の舞台となる監獄におけるへテロトピア的空間の役割についても、博士論文の内容を発展させて考察を深めた。この研究結果は2023年3月に同志社大学グローバル・コニュニケーション学会が発行する査読付紀要『コミュニカーレ』第12号に論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネオ・ヴィクトリアン文学作品におけるヘテロトピア的空間を具体的に分析することにより、小説内の女性の登場人物の描かれ方について考察を深めることができた。また、前年度のヘテロトピアに関する文献調査の結果と実際の小説の分析を結びつけることによって、ヘテロトピア的空間の概念を用いてネオ・ヴィクトリアン文学作品を分析する意義についても考えを深めることができた。これは令和5年度の研究において中心となるテーマである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、これまでの研究結果をもとにして、ネオ・ヴィクトリア文学作品の意義を明らかにすることを目的としている。さらに、ネオ・ヴィクトリアン文学研究におけるヘテロトピア概念の有用性、ネオ・ヴィクトリアニズムの文化的な意義についても検証を試みる。今年度分析を行った作家の作品以外にも研究対象を広げ、より包括的にネオ・ヴィクトリアン文学とヘテロトピアの関係性について議論が行えるようにしたい。
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Causes of Carryover |
学会発表が海外ではなく国内だったため、旅費の支出が想定よりも抑えられた。今年度使用しなかった助成金については、翌年度分の助成金とともに海外学会へ参加するための旅費及び図書費に充てる予定である。
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