2021 Fiscal Year Research-status Report
19世紀末から20世紀前半のベルギーにおける文学・美術の動向と社会主義との関連
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21K12965
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
吹田 映子 自治医科大学, 医学部, 助教 (10738925)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Georges Eekhoud / ジョルジュ・エークハウト / 社会主義 / 美術批評 / ベルギー / 小説 / 絵画 |
Outline of Annual Research Achievements |
19世紀末から20世紀前半にかけてのベルギーにおいて、文学および美術の活動に社会主義がいかに関係していたかを明らかにするという目的のもと、19世紀末の小説家であり美術批評家でもあったジョルジュ・エークハウト(1854-1927年)に着目し、文献調査を開始した。その中途成果を、2021(令和3)年5月にオンラインで開催された日本フランス語フランス文学会春季大会においてフランス語で口頭発表した。演題は《 Georges Eekhoud et la peinture : embryon de critique d'art dans La Nouvelle Carthage 》、直訳すると「ジョルジュ・エークハウトと絵画 ―『新カルタゴ』における美術批評の萌芽」である。エークハウトの小説『新カルタゴ』(1888-1893年)中の一章で、フランドル絵画の歴史が引き合いに出されつつ、同時代の画壇が批判されていることに注目し、エークハウトの経歴に照らした上で、当章が美術批評家の立場を明らかにしたエークハウトの先駆的文章であると指摘した。この段階では、社会主義に関する文献収集を開始しておらず、社会主義というテーマを顕在化させることはできなかった。しかし学会発表の場で指摘されたように、エークハウトについては国内においても国外においてもほとんど知られてこなかったため、この作家について取り上げたことはそれだけで意義があった。 その後、視点をエークハウトという一人の作家から19世紀末ベルギーの社会状況へと拡げ、これを明らかにするための文献収集を行ったが、コロナ禍による行動制限や教育業務の負担増などにより大幅に滞った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021(令和3)年度中はコロナ禍が継続することを想定し、ベルギーへの調査旅行は行わず、国内で可能な資料の収集・閲覧・読解を行う予定を立てていた。しかしながら、オンライン授業への対応等による教育業務の負担増や、国内図書館における利用制限などがあり、部分的にしか資料の収集・閲覧・読解を行うことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は効率よく研究を進めるため、当初の計画を変更する。当初の計画では、20世紀のものということでシュルレアリスムに関する基本文献の収集を後回しに考えていたが、こちらは社会主義関連の文献とは異なり、何が必要であるかが予めわかっている。こちらの収集を前倒しで行うことで研究環境を整え、効率よく研究できるようになると考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、コロナウイルス感染症の影響で、エークハウトに関して行いたかった国内図書館での貴重資料の閲覧ができなかったこと、また、オンライン授業への対応等により教育業務の負担が増えたことなどが理由である。 2022(令和4)年度は当初の予定額から余剰金分を差し引いて請求したが、これらを使用するに当たり、効率を重視して当初の計画を変更する。当初の計画では20世紀のものということで後回しに考えていたシュルレアリスム関連の基本文献の収集に予算を優先的に充て、まずは基礎的な研究環境を整える。
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