2022 Fiscal Year Research-status Report
現代中国語における程度性の言語化と比較・数量に関する研究
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21K12983
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
前田 真砂美 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (00617342)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 程度性 / 助詞“的” / 〈モノ〉ベース |
Outline of Annual Research Achievements |
いわゆる「“(是)…的”文」において人称代詞が目的語となる場合、一般に人称代詞は“的”の前に置かれる(“(是)…VO(人称代詞)的”)ものとされている。それに反する“(是)…V的O”(Oは人称代詞)の形式は、“的”の機能によりOが発話現場に存在することを前提としたうえで、「VによっていまここにOがいる」「VによっていまのOがある」のように、Oの存在の「あり方」を臨時に規定するものであること、そして、そのような規定自体が極めて現場依存的であることが、“(是)…V的O”(Oは人称代詞)の形式が書面語には見られず、口語においてよく見られる理由であることを明らかにした。しかし、中国語では人称代詞が連体修飾を伴うことは少ないため、“…的+人称代詞”の形式自体が稀であり、特に口語において人称代詞が通常の連体修飾を伴いやすいという傾向も見られない。“(是)…的”文において“…的+人称代詞”の形式が許容される背景については充分な考察ができなかったため、引き続き検討する。 “(是)…的”文自体は程度表現に関わらない形式であるが、助詞“的”がモノの存在を前提とする〈モノ〉ベースの機能をもつことを踏まえると、程度副詞と“的”が共起する“挺~的”や、“大大的”、“清清楚楚的”のような“形容詞の重ね型+的”などの程度表現に“的”が使用される動機についても、従来とは異なる視点からの記述が可能となる。 また、程度副詞や程度補語などの程度性発現のメカニズムを考察するには、これらを伴わない形式との比較が不可欠であるため、裸の形容詞が単独で述語になる例を収集・整理し、その語用論的機能について考察を行なった。2022年度内に論文の形にまとめることができなかったが、次年度に発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、比較や数量表現のもつ文法的機能と程度性発現とのかかわりについて考察するものであるが、程度表現によく共起する“的”の役割を定義する必要が生じ、また、程度表現について考察するには、無標の形容詞述語(程度副詞や程度補語を用いず、比較構文でもない形式)の特性を明らかにする必要があり、先にこれらに着手したため、当初予定していた「比較や数量表現のもつ文法的機能と程度性発現とのかかわり」についての直接的なアプローチが遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目にあたる2023年度には、初年度に予定していた程度表現と比較の関連性について、先行研究の分析と整理に取り組み、比較に関わる個別の言語現象を「程度表現における比較と数量表現の役割」という観点から程度性発現のメカニズムという枠組みのなかに位置付けることを試みる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で研究会や学会全国大会がすべてオンライン開催となったため、国内旅費を使用することができなかった。翌年度以降の対面開催の研究会、学会参加費に充てる予定である。
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