2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Conditions of Usage of the Case Particle 'Ni' Based on the Misunderstandings of the Chinese Who Study Japanese-Regarding the Contrastive Ones in Chinese-
Project/Area Number |
21K13009
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
呂 芳 立命館大学, 言語教育センター, 嘱託講師 (20745989)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 格助詞「ニ」の過剰使用 / 「とき」の後の「ニ」の付加有無 / 格助詞「ニ」の脱落 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国語を母語とする日本語学習者における「ニ」の脱落と過剰使用について研究を進めている。①時間名詞の後の「ニ」の脱落について。2021年に脱落した「ニ」とそれに前接する名詞句との関係について整理した。脱落した「ニ」に前接する「時間名詞」の後に「ニ」の脱落が多いことが分かった。そこで,時間名詞に絞って特に「ニ」の脱落が多く見られた「とき」を対象にし,「ニ」の付加の有無は「とき」の主節(Q)と従属節(P)との関係性について詳しく検討してみた。具体的に中国語を母語とする日本語学習者が産出した誤用例を手掛かりにし,主節の述語が「状態」と「動作」「変化」に分けて,「現代日本語コーパスの用例で検証しながら,「とき」の後の「ニ」の付加条件を提示してみた。例えば,主節が「状態」を表す名詞述語文と形容詞述語文である場合はもし主題が主節に含まれると従属節のときの後に「ニ」を付加しない。また主節の述語が「動作」や「変化」の場合は,ときの後に「ニ」を付加することはオプションになる。上記の研究内容は2022年8月に行われた日中対照言語研究会で口頭発表をした。 ②「ニ」の過剰使用について。誤用コーパスから「ニ」の過剰使用の誤用例を集めて誤用パターンごとに整理・分類した。「ニ」の過剰使用はまず事象との共起関係(時間名詞の後の「ニ」) によって生じる「ニ」の誤用(特定の動詞との共起制限はない)が目立っており,また受け身構文、可能構文、使役構文といった構文との共起関係(形態素による選択)によって生じる「ニ」の誤用,さらに動詞との共起関係(選択)によって生じる「ニ」の誤用と心的状態を表す形容詞の項としての「ニ」の誤用といった四種類に分けられる。このうち,時間名詞の後の「ニ」の誤用は一番多かった。上記の研究内容は東アジア言語文化学会第4回大会で口頭発表をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初に提出した計画は2021年に格助詞「ニ」の過剰使用,2022年に格助詞「ニ」の脱落について一年ずつ研究するということであったが,実際にデータを見てみると,過剰使用より脱落の誤用が明らかに多くてその誤用も複雑であることが分かった。そこで,2022年にも「ニ」の脱落は2021にご報告したように研究を続けてやっていると同時に,「ニ」の過剰使用も本格的に研究を進めている。しかし,2021年に予定となった中国語との対照はまだ着手できていない状態である。 「ニ」の脱落については,その誤用実態を明らかにしたうえで脱落が特に多く見られた時間名詞「とき」に焦点を当てて検討した。誤用コーパスから「PときQ」の後の「ニ」の脱落の誤用例を集めて誤用パターンを確認し,また現代日本語コーパスの中から「PときにQ」と「PときQ」の用例のデータを収集し,「ニ」の付加がどのようなときに起こっているかを先行研究の主張を基に確認し,「ニ」の付加条件を提示してみた。2022年5月に『「PときにQ」と「PときQ」ー「ニ」の付加の有無をめぐってー』を題目にし, 日中対照言語学会第46回大会(2022年度春季大会)で口頭発表をした。一方,「ニ」の過剰使用についても,誤用コーパスから誤用例を集めて過剰に使用した「ニ」について分類しパターン化を試みてみた。さらに過剰使用が多く観察された「時間名詞」の後の「ニ」の過剰使用について詳しく検討してみた。2023年2月に「中国語を母語とする日本語学習者における格助詞「ニ」の過剰使用について―時間名詞に後接する「ニ」の過剰使用を中心に―」を題目にし,東アジア言語文化学会第4回大会で口頭発表をした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初に提出した計画は2021年に格助詞「ニ」の過剰使用,2022年に格助詞「ニ」の脱落,2023年と2024年に「ニ」とほかの助詞との誤用について一年ずつ研究するということであった。つまり2023年に「ニ」とほかの助詞との誤用に着手するというスケジュールであった。しかし実際にデータを整理し,先行研究を調べてみれば「ニ」の脱落と過剰使用はその誤用実態を調べることに止まっていることではなく,誤用が目立っている用例について掘り下げる必要があるように思われる。そこで,2023年に「ニ」の脱落と過剰使用が多く観察された用例に注目し,2022年に口頭発表した研究内容,つまり『「PときにQ」と「PときQ」ー「ニ」の付加の有無をめぐってー』と「中国語を母語とする日本語学習者における格助詞「ニ」の過剰使用について―時間名詞に後接する「ニ」の過剰使用を中心に―」は論文にまとめてみたいと考えている。ほかに,時間を表す名詞以外の形式名詞の後の「ニ」,受け身構文や変化構文などの構文に出現する「ニ」および動詞文と名詞・形容詞述語文に観察される「ニ」の脱落と過剰使用についても整理し,考察してみたいと考えている。2023年に「ニ」の脱落と過剰使用の部分についてメインな内容を完成するように目指したい。一方,中国語との対照は,2021年に分離・分割を表す動詞が述語となる文において「ニ」と中国語の結果補語との対照について口頭発表をしてみたが,2022年に中国語との対照研究はまったく取り入れておらず,2023年に対照研究は本格的に始めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスが収まっているものの,参加した研究会や勉強会はまだオンラインで実施されたことがほとんどであったため,当初の計画で予定していた出張や学会に行くことができず,次年度使用が生じることになった。これを利用して2023年度は経費を以下の面で使用する予定である。 ①研究のために,特に日本語学,中国語学、日中対照などの言語類に関係する書籍と図書を購入する予定がある。②コロナで中止した社会活動が回復されている今,研究会は会場で開催する場合,なるべく現場に行って研究会に参加する予定である。それに伴い,出張費を計上する。③データを分析する際に,ほかの研究者の意見を聞くために移動の費用と謝礼が生じる。④発表のレジュメや投稿論文について,校閲とネイティブチェックが必要になるので,アルバイト代を支出する項目として考えられる。⑤必要に応じてアンケートを作成し実施する場合の謝礼。⑥研究するためのその他の消耗品。
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