2022 Fiscal Year Research-status Report
平安時代における后の権能~饗宴儀礼と空間の分析から
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21K13093
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
東海林 亜矢子 お茶の水女子大学, コンピテンシー育成開発研究所, 研究協力員 (30869219)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 摂関期 / 饗宴儀礼 / 王権 / 后 / 儀式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平安時代を中心に行われた后に関連する饗宴儀礼の分析により后の権能と役割を考察し、当該期の権力構造、王権構造解明を試みるものである。主に検討するのは、a立后大饗、b正月中宮大饗、c正月中宮臨時客という、臣下から王権構成員としての后に転換する儀礼(a)やその地位や身分秩序を毎年年頭に確認する儀礼(b・c)について「儀礼要素」と「空間構造」に着目しながら研究を進めているところである。 二年目の今年度は、昨年度に引き続き、古記録・儀式書等から関連史料の収集を進めた。特に本年度は摂関期ならびに院政期初期の史料を中心にデータとして打ち込み、中でも饗宴儀礼の場所・参加者、盃事における空間と勧盃者と后の関係性、後日の饗についてなど個別の儀礼要素について情報の蓄積を行った。 これらをもとに、a立后大饗の儀礼内容について院政期の儀式書『江家次第』に記載される儀礼内容が確立する過程を古記録から抽出・検討し、c正月中宮臨時客の成立との関係にも言及する論考を発表した。具体的には、儀礼主体である后と参加者である公卿以下が空間を共にしないという儀礼の「弱点」が、公卿座が変更された十世紀後半に生まれたこと、それを解消するため場を移動しての新たな饗を付加することで十一世紀中頃に儀式書の内容が確立したとと考えられることを明らかにした。これによって当時の政治の担い手である内裏昇殿者と后の関係が儀礼成立当初より格段に親密になり、后の権威上昇につながったことを明らかにした(「『小右記』にみえる立后儀礼」〔図書1所収〕)。また、これを踏まえた平安時代の后の儀礼や後宮の意義についての論考も発表した(「平安時代の後宮」〔図書2所収〕)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、京都など国内移動を伴う現地調査や学会参加をする予定であったが、特にプライベートで病院に多く行かなくてはならなかったこともあり新型コロナの状況を鑑みて、行うことができなかった。そのため、建築史的な研究を行うことができなかった点で、予定よりやや遅れてしまった。とはいえ、そのほかの史料収集や分析などの部分では順調に進められているため、次年度には遅れを取り戻せるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も引き続き古記録を中心に史料を精査していくが、特にそれぞれの儀礼の舞台となる空間(内裏曹司の庭、玄輝門廊、里第対の母屋、寝殿庇など)について、建築学あるいは絵巻等からの情報も含め、その違いや変化の意味について検討し、当該儀礼が果たした意義を見出していきたいと考える。 また、主に中国の史料を比較検討することによって、日本の貴族社会における后の儀礼の特徴を見出したいと考える。
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Causes of Carryover |
本年度は「7現在までの進捗状況」にも記載したように、国内移動を伴う研究ができず旅費支出が0円になってしまったために次年度使用額が生じた。 次年度に行う予定である。
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