2021 Fiscal Year Research-status Report
18-20世紀初頭のモンゴルにおけるジェンダー秩序の解明
Project/Area Number |
21K13113
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀内 香里 東北大学, 東北アジア研究センター, 学術研究員 (60867357)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | モンゴル / ジェンダー / 清朝時代 / ボクト政権期 / ハルハ / 遊牧民社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度のためモンゴル国内での長期の史料調査を予定していたが、新型感染症のために実施できなかった。しかしながら、過去に調査してきた史料を活用し、本課題である「18-20世紀初頭のモンゴルにおけるジェンダー秩序の解明」を目指して研究を進めた。その成果は、3月に主催した研究会「モンゴルのジェンダー規範とその変容:特に18世紀から現代まで」にて発表した。また、この研究会にて他の時代のモンゴル・ジェンダーを研究する先生方と議論をしたことは、本課題の遂行に大いに寄与した。これと並行して、清代モンゴルの基層社会の構造、その統治機構を明らかにした単著「清代モンゴル境界考:遊牧民社会の統治手法と移動」を出版した。 こうした研究活動から次の点を明らかにした。清代モンゴルにおいては、女性が役所等への報告を行っていたことは確認できず、たとえ被害者であっても役所とのやりとりは全てその夫や兄弟、父親が行っていた。夫婦間の問題にも行政は介入しており、その際には常にその婚姻が正式であるかどうかが問われた。子については、両親が誰であるのか明確であっても「正式な婚姻」の男女でなければ「父なし子」として扱われた。また、女性が一人で暮らす事例はなく、夫が亡くなったり離婚した場合には実父や兄弟等の扶養に入り、彼らと暮らすことが求められた。 このように限られた史料からは断片的な情報しか得られなかったが、清代モンゴルにおいては女性の社会的・政治的位置は現代よりも、また男性よりも低かったと言える。一方、春の研究会で明らかになったように、社会主義時代には女性の権利をめぐる運動が活発になり、現代においては女性の教育水準は男性と変わらない。 清代の女性の社会的位置を他の時代と比べられたことは本課題においても有意義である。同時に、史料が限られており、各ジェンダーの「家」での位置づけや役割を考察できなかったことは大変残念である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型感染症のためにモンゴルに渡航できず、本課題の基本資料となる現地アーカイブ史料を十分に調査し、収集することができなかった。とはいえ、単著を出版したり研究会を開催したりして、研究の成果を公表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
モンゴルへの渡航が比較的容易になったため、次年度の前半はモンゴルに行って基本資料を集める。次年度の後半には、清代のモンゴル人の日常生活を分析して、その行動規範について明らかにしたい。そのうえで、3年目以降はジェンダー・レジームを考察し、その社会的インパクトについて私見を提示したい。 清代モンゴルにおけるジェンダー秩序について理解を提示できるようになった後は、他の時代や他の地域との比較をし、歴史的連続性、地域や社会による相違を考察し、社会主義期より前の時代のモンゴルのジェンダー秩序を相対化する。 これらの研究の遂行の過程で、さらなる史料調査が必要であれば適宜行う。
|
Causes of Carryover |
モンゴルに史料調査に行く予定だったが、新型感染症のために行けなかった。そのため本年度の主な経費であった旅費を使わなかったため、このように使用額が計画より少なくなった。 2022年度にはモンゴルに行く予定であり、その際にこの予算を使う所存である。
|