2021 Fiscal Year Research-status Report
Continuity and Discontinuity of Irrigation "Customs" in Early Colonial Taiwan
Project/Area Number |
21K13114
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前野 清太朗 東京大学, 教養学部, 特任助教 (70844819)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 植民地社会史 / 旧慣・慣習法 / 植民地統治 / 台湾総督府 / 地域社会 / 地域エリート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は植民地移行期の台湾(本研究では1870年代から1910年代と定義)における地域水利管理制度の変容について、植民地統治の制度史的側面と地域事例研究から明らかにすることをめざしている。2020年度以降続くCOVID-19の世界的流行によって、現地フィールド調査を含む事例研究パートについては着手を先送りせざるをえない状況にある。一方、制度史的な分析に関していえば、台湾におけるデジタルパブリックアーカイブの利用状況がこの2年間で大きく改善が見られたことから、総督府文書等の一次資料を利用して研究を進展させることができている。2021年度は、制度史的研究の第一段階として、水利管理制度への公的な介入が強まる背景となった、統治最初期~児玉源太郎・後藤新平体制に至る総督府と台湾在地名望家(地域エリート)の関係について分析に取り組み、この期間において一種の「相互誤解」を交えた両社の協同関係が存在していたことを明らかにした。とくに前野(2021)では、総督府と名望家の間の初期の協同関係(およびその消失)について、植民地行政において用いられた各種文体の「漢文」の角度から分析を試みた。本論文の成果は、1900年代から1910年代の展開について加筆を行ったうえ2022年度以降に改めて公表する予定である。また2021年度に試験的に試みた日本国内の事例との比較についても、各所のワークショップ等で順次報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度以降世界に拡大したCOVID-19流行の影響により、フィールド調査・現地所蔵資料調査等の海外渡航を伴う調査の実施は行えていない。このため、2020年度に終了予定であった以前の研究計画について後倒し・計画変更が余儀なくされ、本研究計画の実施にも影響を及ぼしている。ただし本研究については当初より初年度は極力基礎的な調査に注力することを計画していたこと、また台湾側においてオンライン公開されているアーカイブ群の整備が進展したことから、2021年度の本研究計画の初歩的な部分については概ね計画通りに進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19流行に伴う外国籍者の入国制限は、厳格な防疫対策をとる傾向にある東アジア諸国・地域にあってなおしばし継続するものと予想される。このため、長ければ研究実施年度の半ばころまで当初予定していたフィールド調査・現地所蔵資料調査は実施できない可能性がある。2021年度においていくつか試みた日本国内の事例調査(明治~大正期の国内政策)について、新年度以降は国内フィールド調査等による情報収集の深化と比較を探ることを想定している。またオンラインで入手可能な資料についてだけでも多数の一次資料が入手可能となっていいることから、文献によって現状確認可能な事例整理の作業を、本来想定していた現地フィールド調査に先だって進めておく予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画では現地所蔵資料の収集およびフィールド調査のための海外(台湾)調査費用を旅費として計上していた。しかしながら2021年度もCOVID-19の世界的・国内的流行によって現地調査のみならず対面での学会・研究会開催もほとんど行われなかった。このため本来想定していた旅費支出がまったく発生しなかったうえ、前年度からの繰り越し予算である先行する科研プロジェクト(研究活動スタート支援)の予算執行を優先したことから、本年度の研究予算の大部分を翌年度に繰り越さざるをえなかった。
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