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2021 Fiscal Year Research-status Report

唐代史研究史料としての『新唐書』志の研究

Research Project

Project/Area Number 21K13119
Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

西田 祐子  大阪大学, 人文学研究科, 招へい研究員 (70883734)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2026-03-31
Keywords唐代史 / 唐帝国 / 『新唐書』 / 史料批判 / 羈縻 / 志
Outline of Annual Research Achievements

本研究課題は、中国に関する歴史学の分野で史料として習慣的に用いられてきた正史のうち、特に唐代を研究するにあたり重要な文献である『新唐書』に着目し、その史料的価値を再検討して、『新唐書』の編纂・記述が唐代史研究に与えてきた影響を明らかにしようとするものである。『新唐書』は唐朝が滅びたのち、宋代になって編纂された紀伝体の書物であり、本紀・志・表・列伝の4部に分かれるが、本研究では主に志の部分に着目して分析を加えている。志の部分は、『新唐書』の志が『旧唐書』というさきがけて成立していた歴史書をベースにしつつも、分量をかなり増やして再編纂していることが知られており、また、その過程で編纂者が〈まとめ〉をおこなう際に、自らの認識をテキストに表現している可能性が高いと推測されるからである。
研究課題の初年度では、志のうち、とりわけ「地理志」と「兵志」に着目し、綿密な検討を加えた。特に「地理志」の分析においては、「地理志」中の複数個所において後世の宋代の編纂者による恣意的な編纂の痕跡が明確に認められ、そうした部分を唐代史研究の根拠として用いてはならないことが明らかとなった。とりわけ、「地理志」中に見られる「羈縻」という語は、従来の唐代史研究において重要な意味をもつ表現であったが、『新唐書』中では編纂者の思考が影響しており、本来の唐代当時の用法と『新唐書』成立以後とにずれが生じていることが明らかになったと考えられる。このことは、『唐帝国の統治体制と羈縻―『新唐書』の再検討を手掛かりに―』(山川出版社、2022)においても言及することができた。「兵志」については次年度も作業を継続する。
また、この「地理志」に見いだせる宋代編纂者の誤解(ないしは意図的な改変)を含む記述は、『新唐書』成立以降のほかの多くの文献や、それらに基づいた思想にも影響を与えていることが予想される。次年度以降の分析課題としたい。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

現在までの研究の進捗状況は、おおむね当初の研究計画書通りである。
また、本年度における作業・分析の成果の一部を含めた著書を刊行できた。
本研究は、5か年計画で『新唐書』の志部分を全体的・網羅的にテキスト分析するというものであるため、初年度において「地理志」についておおむね全体像を把握し、十分な先行研究を集め、可能な限りの分析を加えることができた点は、研究計画に沿ったものであるといえる。
『新唐書』の他の志の部分については、現在分析作業に着手している「兵志」の部分について、次年度も作業を継続する必要があるものの、成果公開の方法などについて、諸々の関連分野の成果報告などからすでに着想を得ており、計画は順調に進められていると考える。

Strategy for Future Research Activity

今後は、継続して『新唐書』志の部分についてテキスト分析をおこない、それぞれの志について各論的な成果報告をまとめたのち、『新唐書』全体に関する史料編纂・資料操作の痕跡について全体的な考察を加える予定である。
具体的な作業としては、『新唐書』志に対して確認できるすべての現存する先行史料を一覧化し、切り貼りの編集の痕跡を厳密に調査する。また、先行史料の存在しない部分のうち、『新唐書』編纂者自身が書き込んだと思われる部分を抽出し、宋代文献等と照らし合わせながら〈書き下ろし〉かどうか分析する。その際、次のような手順をふむ。
①『新唐書』編纂者が用いたと思われる先行記事をすべて指摘する。②テキストの編集の痕跡を収集して分析し、編纂者の編纂の方針・くせ(助字の追加、常套句の挿入等も含む)をパターンとして抽出する。③編纂者による〈書き下ろし〉とみなせる章段が存
在することが予測されるが、そうした部分と北宋期の言論との間との関連性を調査する。④『新唐書』志のテキストが現代の唐代史研究の成果に与えている不適切な影響があるかどうか調査する。

Causes of Carryover

新型コロナウイルス感染症流行の影響により、予定していた学会参加による出張が中止となったため。また、購入を予定していた海外出版のものを含む書籍類、および機材の一部が入手困難となったため。

  • Research Products

    (1 results)

All 2022

All Book (1 results)

  • [Book] 唐帝国の統治体制と「羈縻 」―『新唐書』の再検討を手掛かりに―2022

    • Author(s)
      西田祐子
    • Total Pages
      288
    • Publisher
      山川出版社
    • ISBN
      978-4-634-67396-0

URL: 

Published: 2022-12-28  

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