2021 Fiscal Year Research-status Report
第二次世界大戦期アメリカ合衆国による戦略爆撃作戦の経済的基盤
Project/Area Number |
21K13131
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
藤田 怜史 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (30738381)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 戦略爆撃 / 戦時経済体制 / 航空機産業 / 第二次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第二次世界大戦時のアメリカ合衆国による戦略爆撃作戦について、その実施を可能にした経済的要因を明らかにすることを試みるものである。 2021年度は、当時最新鋭の長距離爆撃機であったB-29を用いた日本本土に対する戦略爆撃作戦に焦点を当てた。この問題に関する先行研究の争点のひとつは、当初アメリカ航空軍が実施していた「精密爆撃」作戦から、1945年3月から東京大空襲に代表される「地域爆撃」作戦へと転換された理由がなんであったか、というものである。本研究ではこの問いに答えるため、そもそも対日本土爆撃作戦の実施に必要不可欠であったB-29の「数」に着目した。 先行研究ではしばしば精密爆撃がじゅうぶんな結果を残せなかったことが地域爆撃への転換の主要因であったと説明されるが、そもそも航空軍の本部では、その失敗がはっきりする以前から地域爆撃への関心が高かった。しかし、地域爆撃によって大きな成果をあげるためには、一度の作戦に十分な数のB-29が投入されることが前提とされていたのである。実際、100機程度の部隊による地域爆撃の「実験」が行われていたが、大した結果を残せなかった。精密爆撃から地域爆撃への転換における必要条件は、B-29の数がそろうことであった。 しかし、1945年2月末までに300機程度のB-29が運用可能となり、爆撃を実施する部隊の編成も進んだ。2月25日に地域爆撃の「実験」が東京に対して実施され、満足ゆく結果をあげられたため、3月9日から10日にかけての東京大空襲、そしてその後の大規模な地域爆撃作戦の展開につながったのである。このことは、戦略爆撃という戦略の実施において、いかに産業基盤を整え、そのための政策を立案、遂行することが重要化を示唆するものである。この点こそが、2022年度以後の課題のひとつとなるであろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記した2021年度の研究を実施する際に主に用いたのは、二次文献、オンラインデータベース、そして国会図書館(日本)所蔵の戦略爆撃調査団報告や爆撃作戦実施報告書などである。当初の研究計画では、「課題1」として、それに加え、F・D・ローズヴェルト図書館所蔵(オンライン)の戦時生産局関連資料を収集、分析し、B-29の量産を可能にした経済政策の分析も進める予定であった。しかし当該年度は対日戦略爆撃作戦の実施に関する調査研究に時間をとられ、後者の作業が停滞してしまった(資料の収集自体は大部分完了している)。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度では上で言及した「課題1」の完遂を目指し、オンラインで入手できた戦時生産局関連文書の分析を特に進める予定である。また、23年度以降の研究を円滑に進めるため、可能な限りの資料の収集を進めたい。ただし現下の状況においてアメリカでの資料収集を十分行えるかは不透明である。そこで、アラバマ州マクスウェルにある空軍歴史調査センター所蔵では指定した資料を有料で取り寄せができるため、そのシステムを用いて可能な限りの資料を収集しておきたい。
|
Causes of Carryover |
学会等がほぼオンライン開催であり、出張がほとんど実施されなかったことが大きな要因である。22年度は少しずつ対面での学会開催が増えていく見込みであり、積極的に参加する予定である。
|
Research Products
(2 results)