2021 Fiscal Year Research-status Report
The channel migration of the Yodo River in the Kawachi Lowland Plain based on the analysis of geological data from the archaeological sites and the historical aerial photographs.
Project/Area Number |
21K13137
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
別所 秀高 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (00827256)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 淀川 / 考古遺跡 / GNSS-RTK / 浜堤 / ジオアーケオロジー / ボーリング資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初計画では本年度に淀川後背低地の現地測量・調査を実施するとしたが、着手が遅れたものの年度後半に集中的に実施することができた。調査過程では研究対象地域の高解像度DEM(デジタル標高モデル)が整備されていることが判明し、国土交通省所管の各河川事務所より0.5mメッシュおよび1mメッシュのDEMを入手することができた。このことにより当初計画していたUAVによる空中写真測量の実施を大幅に割愛できる見通しが立つとともに、GIS上で淀川後背低地の高精細な地形モデルを再現することができた。 いっぽう、淀川三角州地帯を対照に地形図や空中写真の判読による地形分類図を作成したところ、大阪市淀川区東三国から同北区天満にかけての南北約6km、東西約1.5kmの範囲に、僅かな起伏を伴って現在でも海岸地形が遺存していることが判明した。この領域の現地表の経緯度および標高をGNSS-RTKを用いて測位したところ、起伏を伴う現地形は浜堤(列)の痕跡であることが判明した。また、現在の淀川の前身となる中津川、あるいは大川はこれらの浜堤を人工的に開削したものであることが予想された。今後、ボーリングデータや考古遺跡の地層データを用いて、この浜堤の形成過程を明らかにしたい。 なお、以上の成果の一部および本研究着手以前の成果を併せて、日本第四紀学会大阪大会の公開シンポジウム(8/29)にて口頭発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究開始期は新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言期間と重なり、フィールドワークを伴う研究活動が当初予定より遅れることが予想され、室内作業を先行して実施し、フィールド調査は下半期に集中させた。 淀川周辺の考古遺跡既調査地点の資料収集は、大阪市文化財協会などの調査機関の協力を得て、大阪市、吹田市、摂津市、茨木市、高槻市、島本町、守口市、門真市、寝屋川市、枚方市、大山崎町域の研究対象となる調査報告書および関連文献を収集し、一部は調査地点のGoogleearthへの入力を済ませた。また、国土地盤情報検索サイト「KuniJiban」によって現在の淀川付近で実施されたボーリング資料を収集し、位置情報や沖積層中の層界および沖積層/更新統境界の標高情報をおおむねデータベース化できたところである。 UAVによる空中写真測量は大阪市北区本庄西および枚方市樟葉中之芝、大山崎町大山崎堤外にて実施した。解析の結果、とくに後二地点では淀川河床に露出する基盤岩の分布や標高を抑えることができ、完新世最高海水準期に大阪京都府境を越えて海域が京都盆地に到達したか否かの判断材料になると考えられる。 いっぽう、GNSS-RTKによる地形測量を淀川河口域で、古空中写真解析用GCP(対空標識)選地のための現地踏査を淀川中上流部後背低地で実施した。淀川河口域の地形測量では地形図や空中写真の判読で見いだされた淀川河口域の大阪市天満付近から東三国付近にかけて発達していた浜堤について、その存在を確実視することができた。GCP選地のための現地踏査では、GCPとして耐え得る地点は予想の半数以下であり、代替的な手法を検討する必要が生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究対象地域の地形分類図作成作業、淀川周辺の考古遺跡既調査地点のデータベース化、ボーリングデータベースを利用した地質断面図作成を実施する。 地形分類図の作成は研究対象地域のうち淀川河口域のみを終えたところである。引き続き空中写真および地形図判読と現地踏査を並行し、全域の地形分類図を完成させる。また、必要に応じて補完的に当該地域の現地測量や調査を実施する。 淀川周辺の考古遺跡既調査地点のデータベース化については大阪市域についてはすでに終えたところで、引き続き他市域の調査地点のGoogleearthへの入力作業を行う。また、各調査地点の柱状図作成を併行して行う。 ボーリングデータベースを利用した地質断面図作成については「関西圏地盤情報データベース」を使用し、淀川後背低地を縦横断する側線を設定し、柱状図を側線に投影した柱状地質断面図を作成する。 以上の作業にもとづき、河内平野縁辺の丘陵・台地/低地境界付近に埋没する波食棚(標高0m〜-2m付近に現れる平坦面および緩傾斜面)や海食崖を追跡し、完新世最高水準期の海域を明らかにする。また、柱状地質断面図から沖積層最下部礫層の下限高度を抽出し、最終氷期最寒冷期頃の古地形を復元する。さらに大阪市天満付近から東三国付近にかけて発達した海岸地形については、海水準変動に呼応しつつ形成され、最高水準期以降に海岸地形から淀川三角州に置き換わったことを明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言および同まん延防止等重点措置により、遠地で計画していたフィールド調査を回避し、その代替として淀川周辺でのフィールド調査を集中的に実施したこと、また、学会がすべてオンラインに切り替わったことから旅費に未使用が生じた。 また、高解像度DEM(デジタル標高モデル)を入手したことによりUAVによる空中写真撮影機会が当初見込みより少なく、UAV機材やそれに関するPCの購入よりもGNSS-RTK関連機器や測量に供する機材の購入を優先したことから物品費に未使用が生じた。 次年度は遠地のフィールド調査や学会発表を当初計画の通り実施し、また、空中写真解析用PCおよびフィールド用のタブレットを購入し、本年度未使用分をこれらに充当予定である。
|
Research Products
(2 results)