2023 Fiscal Year Research-status Report
The channel migration of the Yodo River in the Kawachi Lowland Plain based on the analysis of geological data from the archaeological sites and the historical aerial photographs.
Project/Area Number |
21K13137
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
別所 秀高 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (00827256)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 淀川 / 河内低地 / 長瀬川 / 考古遺跡 / 海水準変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は淀川支川である長瀬川流域の一部地域を含む上町台地以東の淀川河口部から上流部を対象に、既知の考古遺跡地層データにもとづき完新世最高海水準期(6.5-6.1ka)以降の地形形成についての研究を進めた。 新たに観察する機会があった数地点の考古遺跡の地層と既存の考古遺跡地層データの層相解析から、縄文時代前期中頃(6.5ka)、縄文時代中期末頃(4.5ka)、縄文時代晩期(2.9ka)、局所的には弥生中期末(1.9ka)の顕著な地形変化が認められた。淀川流域の海岸線は完新世最高海水準期に大阪京都府境付近まで後退していたとみられるが(別所2024)、4.5-4.0kaまでには淀川の上部デルタプレインが現在の寝屋川付近にまで前進し、河内低地北半はほぼ陸化するとともに河内湾の海域が縮小した。その後引き続き、2.9kaにかけて海域の縮小したが、1.9ka以降になると淡水域が拡大し、再び上部デルタプレインを覆ったことが明らかになった。このような地形変化や水域の拡大縮小は大阪湾周辺の相対的な海水準変動と同期していることが考えられ、最高海水準期以降の5.8ka、4.5ka、2.9kaには最大2.5m程度の一時的な海水準低下が確認できた。 いっぽう、大阪海岸低地と河内低地を境する砂嘴は高海水準期以降に成長し始めた。この砂嘴は1.9kaごろまでには3、4列の浜堤を形成し終えるとともに、西側の大阪湾に向かって淀川デルタが前進し始めたと考えられる。この時の大阪海岸低地と河内低地の連絡口となる淀川の位置は明らかではなく、今後の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フィールドワークおよび、考古遺跡の地層データの収集および地形分類図のアップデートなどを実施した。 フィールドワークとしては京都市伏見区所在淀水垂大下津町遺跡での地層観察および周辺での地形踏査、和歌山・紀の川河口古砂丘の地形踏査、大阪市域の考古遺跡での地層観察を実施した。また、地層データを収集した淀川流域の考古遺跡既調査地点のGoogleearthへの入力を終えるとともに、一部については各調査地点の各時期ごとの地表高情報の入力を開始したところである。 地形分類図のアップデートは、1928年および1943年撮影空中写真(大阪市都市計画局蔵)や1921-23年発行1万分の1地形図(仮製版)の判読、現地踏査にもとづき淀川河口域から順次実施した。また、考古遺跡の地層データに照らして、判読によって抽出した流路跡や自然堤防、地形面の年代を決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
淀川三角州地帯の浜堤部を中心にGNSS-RTK受信機を使用した現地測量を実施する。これは2022年度に実施した市街地での測量においてマルチパス信号の受信により期待値から大きく外れる値が散見されたことから再度現地での測量を実施するものである。 いっぽう、これまでに収集した淀川周辺の考古遺跡既調査地点とともに各時代の高度情報をデータベース化する。また、考古遺跡の地層データを図化したうえで堆積相解析・対比を行い,各調査地点の堆積環境を可視化する。さらにこれらのデータをGISに統合し、淀川過去3万年の地形発達を復元する。 なお、地形復元にあたっての参考にするため、現成の海岸地形や河川地形の現地調査・踏査を早急に実施することとする。
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Causes of Carryover |
2021年度および2022年度に予定していた遠地でのフィールド調査が未実施のままで、本年度も実現できなかった。また、昨年度に引き続きデータ入力を補助するアルバイト学生の確保ができず、自らが入力作業を行ったため、旅費や人件費に未使用が生じた。次年度は遠地でのフィールド調査を早急に実施し、未執行分をこれらに充当させる。
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