2023 Fiscal Year Research-status Report
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21K13146
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
石黒 勝己 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 特別研究員 (60766377)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中国の考古学 / 探査 / ミューオンラジオグラフィー / 飛跡検出期 / 放射線 / 宇宙線 / 固体検出器 / 宇宙物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
まずミューオンラジオグラフィーにおいて設置中のフィルム検出器に記録されたミューオン飛跡が設置期間が長くなると消えてしまう問題解決に努めた。これは乳剤中の銀結晶密度は高く保ちながらゼラチンは牛由来の不純物を多く含むものを用い飛跡保持率を確かめた。その結果これまで89%に低下してしまっていたものを94%と高く保てた。飛跡が記録された直後の保持率とほぼ差がなく有効な成果である。 第二にこれまで用いてきた飛跡再構成プログラムには効率を落とす面があったのでこれを改善した。設置中にフィルムが温度変化でずれたり複数のフィルムをステージで読み込む際に設置位置や回転ずれがあると正しくアラインメントがとれずそのフィルムを除いて解析することがある。そのような場合にもチェックを簡単にできるようにすることでフィルム有効面積の無駄を省き少ないフィルムで確実に解析できるようにした。また尤度を用いたトラッククオリティランクを生かしながら飛跡接続をすることでS/N良く飛跡再構成できるようにした。加えて並列処理を利用することで速い速度で処理できるようにしリアルタイム計測に近づける研究に役立てれる見込みである。 第三にフィルム塗布施設を増設し塗布をすみやかに行えるようにした。塗布150cm*35cmというこれまでの手塗りで最大面積を一度に塗ることが出来る。ガラス塗布盤によってこれまでよりもフラットに乳剤を塗れる研究も行った。これは今のところ大きな面積では無いが小さな面積を速やかに低コストで塗る需要もあり将来研究につながる。 これらの実証はトンネル内にフィルムを置いて上部遮蔽土壌を計測することで行った。計測期間は最長2か月でふったがどれも大きな劣化はなくストレステストに耐えることが出来た。計測ではトンネル内の土の硬さ由来と思われるミューオン数の差も検出されておりこれ自体非常に有意義な成果であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験基礎の整備に関して大変進捗があった。高速処理の実証を進め本番実験を行いたい。赤色立体地図にミューオン探査による内部構造も表現した図化方法を春日古墳の測定結果をもとに開発したので陵台内およびその地下のわかりやすい図化表示を行う。他の探査方法と組み合わせて図化する方法も行ったのでこれを適用できる。
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Strategy for Future Research Activity |
検出器であるフィルムを幅4cm、長さ12cm程度にカットして遮光パックし、陵壁外のボーリング抗内に2か月間程度差し入れておくことでミューオンによる計測を行う。次に、地上部分にフィルムを設置して陵台内を詳しく観測する研究を一年目の冬期に行う。陵台付近の地面に置いたフィルム設置台にフィルムを張り付けてこの観測を行う。この設置台は日本の古墳で実施したものと似た設計で行えるが現地での作業を省力化したり、現地の在住の人だけで設置できる簡単で安定した構造で実現したい。フィルムの作成は名古屋大学の乳剤製造機および奈良県立橿原考古学研究所の乳剤塗布機で事前に行う。その後、スキャンで得られたミューオンのデータを画像に変換する。ミューオンがたくさん来ている方向には埋葬施設などによる空洞がある可能性がある。作成した画像データと陵台の外形の精密な比較を行うことで内部構造の決定をより正確に行う。
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Causes of Carryover |
研究期間中のコロナ流行につき実験地への渡航が制限されたことによる遅れ
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