2021 Fiscal Year Research-status Report
物理探査を利用した遺跡構造の解明に関する実験的研究ー飛鳥京跡復元を中心としてー
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21K13147
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
辰巳 祐樹 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任技師 (50824398)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 地中レーダー探査 / 飛鳥宮跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、物理探査を利用して遺跡構造全体を解明することを目的として掲げている。とくに、地中レーダー探査による奈良県飛鳥宮跡周辺の関連遺跡・遺構の物理探査の解析、また周辺の既掘の調査成果の集積から本地域の地下マップデータを作成し、日本における条坊制導入前の最初期の宮と京のありかたを解明することを目標としている。 令和3年度には、飛鳥京苑池跡北側において地中レーター探査を実施した。探査地の北側では、既掘調査により大規模な南北方向の水路が検出されており、その水路が苑池から延びていることが想定されていたが、苑池北岸が発掘調査により検出されていなかった。探査では、その水路の実態およびまだ明らかになっていない苑池北岸の平面形を推定することを目的とした。 調査の結果、大規模な水路がほぼ南北方向に北側の既掘調査地まで延びていること、またその水路に並行して小規模な水路が設置されていること、さらに苑池北辺は当該水路に収束せず、さらに別の西方向に延びる大規模な水路が存在することなど、当初想定されていなかった苑池関連遺構の存在の可能性が浮上した。補足調査や探査結果の詳細な解析等により、今後より信頼性の高い地中構造を解明し、地下マップデータを作成する予定である。 また、関連研究として飛鳥京苑池跡の調査資料収集、調査担当者との意見交換をおこない、さらに関連調査として、探査データ解析のための比較資料を得るために、飛鳥京苑池と同様に地山を岩盤とする複数の遺跡において探査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は、今年度は飛鳥京関周辺の調査資料の収集、周辺の探査データの取得、飛鳥京跡周辺における試験的な探査の導入を目標としていたが、これらの作業を全て遂行することができた。 また、試験的に実施した調査では十分な成果を得られ、その成果は次年度以降の研究に直接的に用いるデータとして利用できるため、次年度の研究に向けても滞りなく進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、今年度実施した探査データを詳細に解析し、今後の調査方法にフィードバックすることと、研究資料として活用しうるデータ化をおこなう。また、今年度同様に飛鳥宮跡周辺における地中探査の実施を継続し、そのデータおよび関連資料に基づく地下構造の解明を目指す。最終年度までに調査地域の地下マッピングをおこない、復元された飛鳥宮跡周辺の当時の様相と、明確な条坊や区画の存在する藤原京や平城京の造営との比較から、日本における宮と京の在り方について明らかにする。
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Causes of Carryover |
一定額を超える物品の購入時に、所属の規定により競争入札が原則として義務付けられており、その入札時の予定価格と落札額との差分として次年度使用額が生じた。本助成金は、来年度の現地調査における物品費、旅費、人件費として利用する予定である。
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