2021 Fiscal Year Research-status Report
19世紀後半ドイツ地方自治理論の研究――法的拘束力を持つ「本旨」解釈のために――
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21K13182
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
横堀 あき 北海道大学, 法学研究科, 助教 (80897570)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 公法学 / 地方自治 / プロイセン地方自治制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、R. v. GneistとL. v. Steinの議論の解明と比較検討を目標としていた。Gneistについては、新たに法治国家の観点からの文献収集・検討を行った。以上の成果も踏まえ、横堀あき「地方自治体の出訴可能性」憲法理論研究会編『市民社会の現在と憲法』では、近年十分に検討されてこなかった彼の法治国構想が、ドイツでの地方自治体の出訴の論理として重要であることを指摘した。Gneistの議論については、下記連載の2回目で詳細に扱う。 以上の成果に加え、本年度は博士論文の連載を開始した(横堀あき「ドイツ「地方自治」保障に関する一考察(1)」北大法学論集72巻5号)。公表した部分は序論部分であり、わが国で問題となっている地方公共団体の出訴に係る論点を検討する必要を指摘するものであるが、当該論点に係る憲法解釈の必要性の指摘を踏まえれば、指摘自体に意義が認められよう。また、従来、国家法人説等のドイツの議論が出訴を拒む理由とされてきたことに鑑みれば、プロイセンの地方自治制度を検討する必要があることを指摘する点でも、本研究課題を遂行する基盤となろう。 Steinの議論も、自治を公民(所有者階級)の行政(執行権)への参加と見、自治体の二重の立場から、自治に自由な活動領域/amtlichな活動領域の2つを認め、前者については自治体の処分が国家のそれに優位し、対抗する権利がある一方、後者については権限という権利が認められるに過ぎず、機関として決定することが許容されるに過ぎないとする。彼は国家に、自治に対する様々なOberaufsichtの手段を権利として認めるが、この権限を踰越しないよう配慮する必要があると述べていた。 以上に加え、地方団体側の出訴を許容した大阪地中間判令和3年4月22日判時2494号14頁(特別地方交付税の額の決定取消請求事件)に関する判例報告を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Lorenz von Steinの議論について、先行研究ではGneistと併せて紹介される場合が存在するため、当初は両者の議論は――国家と社会の二元論、Hegelの影響を含め――近いものであると予想していた。しかしながらこのような理解は適切ではなく、Steinの議論は有機的な国家把握、そして執行権の中における自治という位置づけが与えられており、国家概念や国家と社会の関係、自治体の位置づけ自体が大きく異なっているように思われる。両学説の全体像が大きく異なっていることから、目標としていた両者の議論の比較は困難であった。またSteinの議論自体が、現在の公法学の議論とは根底から大きく異なっており、把握が容易ではない。以上のことから「(3)やや遅れている。」に該当すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、上述した残された課題について早急に把握した上で、当初の予定通りAlbert Mosseの議論を把握する。その際必要な資料の収集については、状況が整った場合に積極的に出張を行う。
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Causes of Carryover |
本年度中の納期に間に合わなかった物品の購入に充て、次年度速やかに執行する。
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