2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K13191
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
巽 智彦 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (10609126)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 公法訴訟 / 行政訴訟 / 憲法訴訟 / 要件事実論 / 職権探知主義 / 判決効 / アミカス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、公法訴訟の審理および裁判に関する諸論点について、公法学のみならず訴訟法学の見地から立ち入った分析を行い、憲法学、行政法学、訴訟法学の分野横断的な理論を構築するとともに、実務に対する具体的な提言を行うことにある。本研究の考察対象は、公法訴訟の(1)「審理」と(2)「裁判」のそれぞれの諸論点である。 (1)「審理」の論点としては、第一に、(ア)裁判所と当事者の役割分担の問題(事実問題については弁論主義と職権探知主義の対抗関係、法問題についても、法的観点指摘義務の議論)があるところ、いずれについてもドイツで興味深い博士論文が公刊されたため、講読中である。第二に、(イ)裁判所がある問題について判断を下す際に依拠すべき基準に関する問題(事実問題については証明責任、法問題については「論証責任」、両者に密接に関わる「解明責任」)があるところ、いずれについても日本の民事訴訟法学における議論が進展しているため、関係文献を精査している。第三に、(ウ)証拠法に関する問題(いわゆるアミカス・キュリエや、法務大臣権限法4条に基づく法務大臣の意見提出、行政庁の訴訟参加など)があるところ、ここでもやはりドイツで興味深い博士論文が公刊されたため、講読中である。 (2)「裁判」の論点としては、紛争解決の範囲として裁判の効力の範囲を捉えたうえで、それを主体的、客体的、時間的範囲に分解して考察を進めているところ、フランス法の取消判決の効力論に関する浩瀚な博士論文が公表されたため、講読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の考察手法は、主として比較法によることとしており、具体的な対象国は、主としてドイツを予定しているところ、ドイツで近時公刊された重要論文はすべて入手でき、順調に購読を進めている。本研究で直接対象とするわけではないが、これまでの日本の「憲法訴訟論」が大幅に依拠してきたアメリカの憲法訴訟論も、ドイツ由来の日本の訴訟法理論を立脚点にして徹底的に観察するならば、我が国の訴訟法理論および訴訟実務に接合可能なものとして再構成することができるとの見通しを持っているところ、上記のドイツの重要論文からはその手がかりとなる具体的な制度をいくつか発見できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は引き続き関係文献の調査、講読に当て、2023年度以降に関係する論文の執筆にとりかかり、2024年度以降をめどに公表を進める予定である。新型コロナウイルス感染症の蔓延状況や、ウクライナ-ロシアの戦争状況が落ち着き、ヨーロッパとの往来が再び大きな支障なく可能となった暁には、海外での文献収集も再開したい。
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Causes of Carryover |
購入する物品が基本的に1万円前後の書籍であるため、5,000円未満の残額を使用することができなかった。翌年度請求分と合わせて引き続き物品購入費に充てる予定である。
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