2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the Nature of the Obligation to Take Precautions in Military Operations in Information Warfare
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21K13197
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
保井 健呉 同志社大学, 法学部, 助教 (00844383)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 武力紛争法 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度の研究は、公布された研究費を活用し、研究目的を達成するために必要な文献の収集と検討から開始した。文献の収集は、当初のリストから若干の修正を加えて行った。これら情報収集の結果、武力紛争法の適用に争いのあるグレーゾーン事態を背景とする必ずしも攻撃のような物理的手段によらない強制力の行使に関する研究が注目を集めていることを確認した。 そこで、本研究の目的である攻撃ではない手段による敵対行為の際の予防措置をとる義務の内容を明らかにするために、当初令和3年度の研究対象として予定していた電子戦に適用される武力紛争法の内容を明らかにするのではなく、今日より多くの注目を集めているグレーゾーン事態における物理的手段によらない強制力の行使において適用される武力紛争法の内容を明らかにすることへと、研究の実施計画を修正した。 研究では、グレーゾーン事態の活用を目指しているとされる、ロシアや中国の国家実行を中心に、その評価を行い、少なくとも年度中における論文の投稿を目指していた。しかし、2021年12月以降のウクライナ情勢の急激な悪化と、ロシアによるウクライナへの侵攻に伴い、参照すべき国家実行が急激に増大することとなった。再設定した目標の達成には、これらの国家実行を適切に評価する必要があるにもかかわらず、流動的な情勢から、その達成は困難である。そのため、再設定した目標の達成を一時保留し、当初の計画通り、電波に関する戦闘である電子戦を中心とした検討を行うよう、目標の再々設定を行った。 現在、電子戦に適用される武力紛争法規則について、その史的展開から今日にいたる内容の確認を行っている最中であり、令和3年度の研究としては、資料の収集と並行しつつ、読み込みを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究実施計画において、令和3年度は砲爆撃のような物理的な攻撃によっても遂行される電子戦における予防措置をとる義務の内容を明らかにすることを予定していた。令和3年度の研究活動として、科研費によって収集した文献を検討した結果、武力紛争法の適用に争いのあるグレーゾーン事態を背景とする必ずしも攻撃のような物理的手段によらない強制力の行使に関する研究が注目を集めていることを確認した。 そこで、当初の研究実施計画をグレーゾーン事態における物理的手段によらない強制力の行使において適用される武力紛争法の内容を明らかにすることへと、研究の実施計画を修正し、研究を行ってきた。 研究はある程度推し進めることができたが、論文としてまとめる段階において、ウクライナ情勢が急速に悪化し、同時に参照すべき国家実行が飛躍的に増大した。修正された研究計画上、当初の研究実施計画をグレーゾーン事態における物理的手段によらない強制力の行使において適用される武力紛争法の内容を明らかにするため、現在進行中のウクライナ情勢における諸国の国家実行の法的評価は不可欠である。他方で、状況は流動的であり、国家実行の評価は、特に非物理的な戦闘の手段・方法の利用に関して定まっていない状況がある。そのため、年度において再設定した短期的な目標の達成を断念せざるを得なかった。 結果として、修正された研究実施計画を保留し、令和3年度当初の研究実施計画に従い、電子戦に適用される武力紛争法規則について、その史的展開から今日にいたる内容の確認に着手した。現在取り組んでいる研究の開始が遅くなったことから、現在の進捗状況には遅れがでていると言わざるをえない。もっとも、再々設定した目標の達成のための研究の構想、資料収集が順調であることから、ここでは進捗状況を少し遅れていると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に収集した文献の検討から設定した目標を、改めて変更する必要が生じたことから、令和4年度の前半では当初の研究実施計画上の目標を達成するため、電子戦に適用される武力紛争法規則について、その史的展開から今日にいたる内容の確認を目指している。 研究は、電波が軍事利用されるようになって以後の法的規制に関する議論を概観した上で、電子戦への今日の武力紛争法のあてはめを確認することを通して、電子戦の際に特に適用される予防措置をとる義務の具体的内容までを明らかにすることを意図している。 当初の研究計画では、電子戦に関する予防措置をとる義務の研究を行った後、心理戦(詭計)に関する研究を行う予定であった。この領域の研究は、2021年度に収集した文献を踏まえて設定した研究の目標とも密接に関連しており、現在進行中のウクライナ情勢において、国家実行と論稿が日々蓄積されている現状にあることから、資料の収集に専念し、成果としてまとめることは保留している。本領域については、ウクライナ情勢に至るまでの蓄積とウクライナ情勢における展開を区分することのできる研究課題の設定を模索している。 対して、当初は研究実施計画では第三段階として実施することを予定していたサイバー戦について、電子戦に関する規制の史的展開を手掛かりに、その類似点と相違点の双方を明らかにし、電子戦を含む非物理的な敵対行為一般に適用される予防措置をとる義務に対して、サイバー戦に独自の武力紛争法上の予防措置をとる義務を特定する研究を行うことを現在構想中である。サイバー戦に関する研究は、その前提となる電子戦の研究が完成後ただちに着手することを想定している。
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Causes of Carryover |
令和3年度の研究では、主として図書の購入に科研費を活用した。科研費については、旅費としての使用も想定していたが、依然として新型コロナウイルスの感染状況の改善が芳しくない中で、学会や研究会、資料収集のための移動が困難であることから出費が発生しなかった。 次年度使用額が生じたのは、優先順位に従った図書の購入において、残額では対象となる図書を購入できなかったためであり、令和4年度の予算と合わせて、購入することを予定している。
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Remarks |
所属研究機関内の研究会での意見交換を行っている。加えて、研究代表である保井の参加する他の科研グループにおいても、武力紛争法上の予防措置をとる義務と関連する研究を行っており、そこでは国家責任法の文脈で述べられる相当の注意義務との関連で、武力紛争法上の予防措置をとる義務の報告を行った。本科研にもその成果を反映できるよう努めている。
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