2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K13199
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
稲谷 信行 大阪経済法科大学, 法学部, 准教授 (10824279)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 管理職労働者 / 管理職員 / 業務執行者 / 解雇規制 / ドイツ労働法 / 母性保護法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、ドイツの母性保護法上の解雇規制に関して、資料収集及びその検討を行った。ドイツ法における有限会社の業務執行者の解雇規制を検討するための作業である。有限会社法上の業務執行者は、原則として「労働者」ではないと考えられており、その結果、労働法上の保護が適用されないとされていた。そのため、従来は、基本的には母性保護法の適用範囲からも外れていた。しかし、2017年の法改正により、一定の要件の下で業務執行者も母性保護法の適用範囲に含まれることになり、その結果として、母性保護法上の解雇規制が業務執行者にも及ぶこととなった。この点で、業務執行者に関する解雇規制の状況に大きな変化が生じている。具体的には、まず2017年改正の契機となったEU法の判例やEU指令等の検討を行った。その上で、母性保護法の解雇規制の具体的な内容についての検討も行っている。母性保護法では、妊娠中及び保護期間中の解雇が禁止されており、使用者は、例外的に行政官庁の許可がある場合にだけ解雇をすることができる。この解雇規制の趣旨や例外的に許可される場合について調査・検討を行い、業務執行者に適用されることの意義について考察を行った。 加えて、本年度は、母性保護法以外の労働法規における業務執行者への適用関係についても検討を行った。特に、解雇制限法及び労働裁判所における会社役員への適用除外規定につき、連邦労働裁判所の判例の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
労働裁判所法の規制等についても検討の対象を広げたこととにより、ドイツ法の調査・検討に当初の予定よりも時間がかかっており、進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続きドイツ法における業務執行者への労働法規の適用関係について検討を行う予定である。解雇制限法や労働裁判所法等の検討に加え、母性保護法が適用されることになったことの実際上の意義の検討、及び、母性保護法と同じくEU指令を基礎にしながら、業務執行者への適用が認められていない法律の状況についての検討を行う。その上で、業務執行者への労働法規の適用の可否等について解雇規制の観点を中心に考察し、管理職労働者等への解雇規制のあり方についての示唆を得たい。その成果については、論文にまとめて来年度中の公表を目指している。
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Causes of Carryover |
当初計画していた海外出張に行くことが難しかく、予定よりも旅費を使わなかったため。次年度は、国内での研究会発表のための出張旅費に使用することを予定している。また、PCやプリンタを購入することも予定している。引き続き、書籍購入のためにも使用する予定である。
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