2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K13220
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
小西 葉子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 助教 (00876708)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 諜報機関 / 基本的人権 / 憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる本年度は、基本的人権保障のための諜報機関の法的統制について検討するため、日本における具体的な訴訟を例に、研究を進めた。2023年2月11日には、第8回一橋憲法判例研究会において「国家の情報収集活動に対抗するための憲法訴訟のありかたを考える-大垣警察市民監視国家賠償請求・個人情報抹消請求事件を題材として-」と題する報告を実施した。本報告を更に発展させた発表を、2023年のThe International Society of Public Law Annual Conferenceにて行う予定である。 比較法研究については、コロナ禍で実施時期が遅れたが、2023年3月7日~18日に海外現地調査を実施した。ドイツ・イギリスに、諜報機関に関する研究が多く行われているオランダを加え、計3か国に訪問した。現地では資料調査を行うほか、法学・政治学などの研究者や実務家と交流し、ICCでの裁判傍聴も実施した。 研究期間全体を通じて、「基本的人権を保障しながら、自国を守るための情報を適切に収集する諜報機関の法的統制は、日本においてどのように実現されうるのか?」という問を検討した。具体的には、1年目に比較法的見地からの検討(小西葉子「行政機関の透明性 ― 欧州各国の諜報機関法制を題材として ― 」総合法政策研究会誌第5号(2022)参照)を、2年目(最終年度)に日本の具体的状況からの検討を実施した。研究全体成果として、「基本的人権の尊重」という憲法の根幹的な価値が、秘匿的な諜報機関の活動との関係においては自然には立ち現れず、訴訟で争うことも難しいことから、いかなる措置をとって「基本的人権の尊重」を浸透させるのか?という課題が重要であることがわかった。この問題意識は、研究代表者の次の研究テーマである「諜報機関法制における憲法的価値の役割と限界」に引き継ぎ、更に検討を深めていく。
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