2021 Fiscal Year Research-status Report
A Fundamental Study on the Diplomacy of Modern Korea
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21K13249
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
李 穂枝 東海大学, 文化社会学部, 特任講師 (20796362)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 朝鮮の外交 / 大韓帝国 / 日露協定 / 近代日韓関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日清戦争以降、清との宗属関係から公式的に解放された朝鮮が以後20世紀初頭(大韓帝国期)に至るまで、どのような外交を展開していったかを、日韓関係を中心に考察することで、大韓帝国外交の特質の一端を明らかにしようとするものである。従来は朝鮮半島をめぐって複雑に絡み合う列強の競合と国内の党派対立に焦点が当てられ、大韓帝国の外交を総体的に把握することが難しかった。このように散漫に見えた大韓帝国の動向を、日韓関係を軸にして時系列的にまとめつつ再構成することで、大韓帝国期外交の特質の一端を浮き彫りにすることを主眼としている。 今年度はまず、日清戦争以後、大韓帝国に至るまでの時期を中心に朝鮮の動向を考察した。この時期に朝鮮半島における重要な変数として台頭するのがロシアである。ロシアの影響力が強くなりつつあるなか、朝鮮をめぐって葛藤していたロシアと日本は密かに日露協定を結ぶことで勢力均衡を図ることとなる。一方、清に代わってロシアの援助を期待しつつ日本に対抗していこうとした朝鮮だが、後に日露協定が結ばれたことを知って困惑し、対応を模索し始めた。この日露協定をめぐる朝鮮の動向を調べ、その成果の一部を研究会や東アジア近代史学会第26回研究大会で報告した。報告の後、さまざまなコメントをいただき、その成果をもって今後の論文執筆につなげるつもりである。 1年目に予定していた韓国での資料調査はコロナの影響で実施できなかったが、新たに入手したドイツとロシアの対朝鮮外交関係資料を講読し、整理する作業を主に行った。これらの資料の内容も加えて、研究報告した内容をさらに深めて論文執筆に努めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は予定していた韓国での資料調査はコロナの影響で実施できなかったが、朝鮮外交関係資料として新たに入手した『ロシア文書翻訳集』『独逸外交文書韓国編』と、『駐朝鮮日本領事館記録』やアメリカの資料を講読することはできた。まだ読み終わっていない部分もあるものの、その資料から日清戦争以降の朝鮮の状況を多角的に把握することはある程度できた。以前『東海大学紀要文化社会学部』(5)に掲載された研究ノートの内容に上記の新たに調査した内容を加えて、朝鮮側の動向を一部まとめて東アジア近代史学会大会で報告した。現在は資料の講読を続けるとともに、朝鮮側の動向を理解するためには思想的背景の理解が必要であると考え、思想史の研究書も講読している。また、当時の朝鮮内部の状況をより一層調べる必要があるため、日清戦争後から大韓帝国に至る時期の朝鮮の動向を中心に研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は、1年目に実施できなかった海外調査を行いたい。今年度は、韓国で大韓 帝国前後の朝鮮・韓国外交史に関する最新の研究および関連資料の調査と講読に取り組みたいと考えている。また、国会図書館憲政資料室やアジア歴史資料センターなどでの資料調査も続ける。 1年目、2年目で行った資料調査や講読の成果をまとめて3年目からは学会報告と論文執筆を進めていく。海外の学会にも積極的に応募して報告の機会を増やしたいと考えている。 大韓帝国成立前後の時期を中心に日韓関係における主な事件を取り上げて、その事例研究を通して大韓帝国期外交の一端を明らかにし、朝鮮における外交の特質を究明する一歩にしていきたい。
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Causes of Carryover |
韓国への資料調査を予定していたが、コロナで海外出張禁止となったため、実施できなかった。これと関連して、資料の整理やネイティブチェックのために請求した人件費も1年目には発生しなかったため、旅費・人件費の経費が残ってしまった。この経費を2年度分と合わせて、海外資料調査の実施費用として使用するつもりである。
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