2023 Fiscal Year Research-status Report
破壊的イノベーションと持続的イノベーションの同時分析
Project/Area Number |
21K13259
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大木 一慶 金沢大学, 経済学経営学系, 講師 (90803445)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マクロ経済学 / 経済成長理論 / R&D / 破壊的イノベーション / 持続的イノベーション / 企業の異質性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、既存企業の持続的イノベーション・破壊的イノベーションと新規企業のイノベーションと経済成長の関連性を分析している。 本研究から得られた興味深い結果の1つは、「新規企業への補助金政策が必ずしも経済成長に好影響を与えるわけではない」ということを示したことである。特許保護政策に関する先行研究では、新規企業への過度な厚遇が経済成長に悪影響を与える可能性を示唆する論文がいくつか存在する。しかし本研究のように補助金政策によって、新規企業支援策が経済成長に与える負の影響の可能性を示した先行研究はかなり限定的である。 本研究の独自性は既存企業の持続的イノベーション・破壊的イノベーションを内生化している点であり、新規企業への補助金は既存企業の持続的イノベーション・破壊的イノベーション両方に対して負の影響を与える。本モデルにおいて既存企業の持続的イノベーション・破壊的イノベーションと差別化財の平均製品品質の間には正の相関があるため、新規企業への補助金によって平均製品品質が低下するという効果が生じる。仮に平均製品品質低下効果が新規企業参入による競争促進効果を上回る場合、新規企業への補助金は経済成長には悪影響となるという結論を得る。 また、「既存企業の持続的イノベーションへの補助は、新規企業のイノベーションには正の効果を与える一方で、既存企業の破壊的イノベーションには負の効果を与える」という結果も興味深い。これは「持続的イノベーションと破壊的イノベーションの間にトレードオフが存在する」ことを示唆しており、経済成長理論の先行研究では注目されていなかった新たな重要着眼点の1つとなり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
”Disruptive Innovation by Heterogeneous Incumbents and Economic Growth: When do incumbents switch to new technology ?” が、Journal of Mathematical Economics(2023年発行107巻)に掲載された。 ” Incremental Innovation by Heterogeneous Incumbents and Economic Growth”については、Disruptive Innovation を組み込んだモデルとの親和性を高めることを目的としてDP刊行前に数回にわたる数理モデルの調整を行っており、極めて強いこだわりをもって時間を割いてきた。その甲斐あって、「新規財の開発」と「既存財の品質成長」の間のトレードオフをうまくモデル内で記述・分析できた論文を近々刊行予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは” Incremental Innovation by Heterogeneous Incumbents and Economic Growth”を完成させて早急にDP刊行まで到達したい。さらに、"Disruptive Innovation"と"Incremental Innovation"の同時分析に関する論文の執筆も着実に進めていきたい。
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Causes of Carryover |
こだわりをもって何度もモデルを改訂した結果、当初予定していた内容の研究を既定の年度内に完遂することは難しいと判断した。よって当研究課題を1年間延長することとした。
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Research Products
(1 results)