2022 Fiscal Year Research-status Report
新興国における通貨危機に対する最適な事前・事後政策の理論的分析
Project/Area Number |
21K13279
|
Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
松本 英彦 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (00897647)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 通貨危機 / 金融政策 / マクロプルーデンス政策 / 国際資本移動 / 新興国 / 為替レート / 外貨準備 / 資本規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アジアや中南米の新興国で繰り返し起きている、大規模な資本流出を伴う経済危機・通貨危機に対する最適な政策について、主に理論的に研究することである。直近では、アメリカやヨーロッパでのインフレ率の上昇とそれに伴う急速な金融引き締めにより、多くの途上国・新興国で資本流出と為替レートの減価が起きている。こうした状況に対する最適な政策について理解を深める本研究の意義は、さらに高まっていると考えられる。 まず、申請時の実施計画で述べた研究案①「金融政策とマクロプルーデンス政策の分析」については、昨年度までに結果がまとまったので学術誌に投稿し、返事を待っている段階である。 次に、研究案②「外貨準備政策」については以下の結果が得られた。まず、国ごとの外貨準備の対GDP比と資本規制の強さをデータで見ると、金融発展度が中間程度の国が多くの外貨準備を保有しており、金融発展度が低い国ほど資本規制を強くしていることがわかった。次に、この関係の背後にあるメカニズムを理解するために小国開放経済モデルを構築して分析した。その結果、国ごとの金融発展度が対外債務の借換リスクを決めている(金融発展度が高いほど対外債務の借換リスクが低い)と仮定すると、金融発展度が中間程度の国で最適な外貨準備の量が最も多くなり、金融発展度が低い国ほど最適な資本規制が強くなるという、データと整合的な関係を再現することができた。この成果を、マクロ・コンファレンス、米国ダラスでのMidwest Macroeconomics Meeting、および神戸大学のセミナーで報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績欄に記載したとおり、研究案①については一定の成果が得られ、ディスカッションペーパーとして公表したほか、国際学会でも発表し、学術誌に投稿した。 研究案②の「外貨準備政策」については、概ね予定通りデータ分析とモデル分析の両方が進み、一定の成果を得ることができた。学会やセミナーで発表できる程度まで研究が進展し、既にマクロ・コンファレンス、米国ダラスでのMidwest Macroeconomics Meeting、神戸大学のセミナーで報告したほか、今後も慶応義塾大学と東北大学のセミナーと、ニューヨークでのCentral Bank Research Association (CEBRA) Annual Meetingでの報告が予定されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究案①については、投稿した学術誌からの返事を待っている段階である。改訂依頼がくればその作業を行うことになり、もしリジェクトされた場合には、コメントに基づいて改訂を行い、別の学術誌に投稿することになる。 研究案②については、2023年度も学会やセミナーでの報告を通じて研究者からのコメントを集め、それに基づいてさらにデータとモデルの改善を続けていく予定である。すでに学会やセミナーで多くのコメントを受けていて、改善作業を始めている。その1つは、データにおける国ごとの金融発展度が、モデルでは借換リスクの大きさと仮定されているが、この2つの関係が明確ではないことである。これを改善するために、借換リスクに大きくかかわる短期借入のデータを用いることを検討している。
|
Research Products
(7 results)