2023 Fiscal Year Research-status Report
新興国における通貨危機に対する最適な事前・事後政策の理論的分析
Project/Area Number |
21K13279
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
松本 英彦 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (00897647)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 通貨危機 / 金融政策 / マクロプルーデンス政策 / 国際資本移動 / 新興国 / 為替レート / 外貨準備 / 資本規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アジアや中南米の新興国で繰り返し起きている、大規模な資本流出を伴う経済危機・通貨危機に対する最適な政策について、主に理論的に研究することである。最近では、コロナ危機に続いて起きたアメリカやヨーロッパでのインフレ率の上昇と、それに伴う急速な金融引き締めにより、多くの途上国・新興国で資本流出と為替レートの減価が起きた。こうした状況に対する最適な政策について理解を深める本研究の意義は、さらに高まっていると考えられる。 まず、申請時の実施計画で述べた研究案①「金融政策とマクロプルーデンス政策の分析」については、事前のマクロプルーデンス政策と事後的な金融政策の引き締めを組み合わせることによって、資本流出を伴う経済危機を効果的に和らげることが可能になることが示された。この論文は、Journal of Money, Credit and Bankingから改訂依頼が来ており、改訂作業を進めている。 次に、研究案②「外貨準備政策」については、国ごとの金融発展度が対外債務の借換リスクを決めている(金融発展度が高いほど対外債務の借換リスクが低い)と仮定すると、金融発展度が中間程度の国で最適な外貨準備の量が最も多くなり、金融発展度が低い国ほど最適な資本規制が強くなるという、データと整合的な関係を再現することができた。この論文は、前年度に引き続き国内外の学会・セミナーで報告した。具体的には、国内では東北大学と慶應義塾大学のマクロ経済学セミナーと、夏に札幌で行われたSWETで報告し、国外では7月にニューヨークで開かれたCEBRA(Central Bank Research Association)で報告した。研究成果は論文としてまとめ、すでに学術誌に投稿し、返事を待っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績欄に記載したとおり、研究案①についてはJournal of Money, Credit and Bankingから改訂依頼が来ている。現在改訂作業を進めており、近々再投稿できる予定である。 研究案②についても、国内外の学会やセミナーでの発表を重ねて論文を改善し、すでに学術誌に投稿した。また、今年度も引き続き国内外の学会で発表していく予定であり、6月にEconometric SocietyのNorth American Summer Meetingで発表することが決まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究案①については、Journal of Money, Credit and Bankingからの改訂依頼に応じて、改訂作業をした上で近々再投稿する予定である。 研究案②については、すでに学術誌に投稿して返事待ちではあるが、2024年度も引き続き学会やセミナーで報告していく。それを通じて、多くの研究者と研究成果を共有するとともに、コメントを集めて改善できる点を検討したり、今後の研究につなげていく予定である。
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