2021 Fiscal Year Research-status Report
EU共同債による景気循環の同期性への影響と最適通貨圏「メタ条件」の充足
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21K13292
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
中尾 将人 千葉商科大学, 商経学部, 講師 (90823774)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 最適通貨圏 / EU / ユーロ / 景気循環 / 共同債 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,(1) メタ条件の観点から共同債が景気循環に与える影響を明らかにすること,(2) 共同債を中心としたマクロ経済政策が景気循環に与える影響を明らかにすること,である。これらを目的とする理由は, 共同債の導入が将来の財政同盟への一歩となる可能性があり,財政同盟は最適通貨圏となるための重要な条件であることから,通貨同盟圏経済にとって重要な出来事となるためである。この目的を達成するために,本研究では,共同債の導入をケインジアンマクロ動学モデルに組み込み,景気循環の安定性分析を行う。景気循環の安定化による均衡点での同期性の達成により,最適通貨圏メタ条件を満たすものとし て考え,共同債と最適通貨圏理論メタ条件をケインジアンマクロ動学によって結合する。 ユーロ共同債のベネフィットは中期的な財政同盟に向けた明白なステップであり,長期的な政治同盟に向けたステップでもあることである。また,財政的に脆弱なユーロ加盟国を保護したり,他の国への伝染が生じることを防ぐことが期待されている。一方でコストは財政政策に関して強調度合いが相当程度高いことが必要とされるということである。 こうしたコスト・ベネフィットが存在する共同債に関する本研究の成果として,共同債の先行研究をまとめ,共同債の様々な仕組みについて整理し,理論モデルを構築するための基礎を構築した。共同債の仕組みの一つとして,ブルー債・レッド債という考えがある。ブルー債はGDP比率60%までのユーロ債には低い金利がつき,レッド債は60%を超えた分には高い金利がつくというものである。こうした分類をマクロモデルに組み込むことで,共同債と各加盟国の国債とのバランスが景気循環の安定性にどのように影響を与えるかを分析できるようになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍に対する様々な対応によって,研究時間が短くなっているため。また,外国で開催される学会に参加することが難しい状況であったため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究に遅れが生じているが,予定通り,共同債を導入した場合の景気循環分析と,超国家的中央銀行による共同債購入の購入政策の効果を分析する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により国内外で開催される学会に参加できなくなったため,それに関連する資金が未使用となった。次年度は学会に現地参加できる状況が増えるため,それに使用する。
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