2021 Fiscal Year Research-status Report
Research project on globalization, income, and global value chains
Project/Area Number |
21K13293
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
笹原 彰 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (30895751)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際貿易 / 国内貿易 / 生産バリューチェーン / アウトソーシング / 雇用 / 産業連関表 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクト開始から現在に至るまで、日本の国内生産ネットワークと国際貿易の相互関係を明らかにする研究に取り組んでいる。本研究では、1960年から2005年までの日本の地域間産業連関表を用いて、日本国内の地域間の生産ネットワークがどのように変化してきているのかを様々な指標(アウトソーシング指数、産業連関上方指数・下方指数、比較優位指数、付加価値貿易額など)を用いて検証している。そして、海外からの中間財の輸入額の変化と国内生産ネットワークの間にどのような関係があるのかを明らかにしている。具体的には、海外へのアウトソーシングが増加して輸入中間財が増加している産業では、国内の生産ネットワークが縮小している傾向にあることが分かった。これまでの研究では、事業所や労働者の空間的な分布の変化を基に生産活動の空間的分散・集中度合いを計測してきた。一方で、本研究では、地域間貿易を直接観察することで国内生産ネットワークの拡大・縮小の度合いを明らかにできた。したがって、学術的価値の高いものとなった。本論文は既に初稿が完成しており、2022年6月頃にディスカッションペーパーとして公開する予定である。そして、その後学術誌に投稿する予定である。その他の関連研究として、国際貿易が男女間の賃金格差に与える影響を分析した論文を執筆し、2021年9月にディスカッションペーパーとして公開した。また、中国からの輸入の急増(いわゆるチャイナショック)が輸入国の経済に与える影響について分析した既存研究を精読、整理し、その成果も2022年1月にサーベイ論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
日本の国内生産ネットワークと国際貿易の関係についての研究に重点的に取り組んでおり、既に文献サーベイと分析を終え、初稿を完成させている。2022年6月頃にディスカッションペーパーとして公開する予定である。また、輸入の増加が日本の労働市場に与えた影響を分析した論文にも取り組んでおり、データセットは既に完成し初歩的分析も済んでいる。以上のことから、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き同じペースを維持して精力的に研究に取り組んでいく。国内生産ネットワークと国際貿易の関係についての研究については、英文校正と分析コードの最終チェックを経て、学術誌に投稿する予定である。輸入の増加が日本の労働市場に与えた影響を分析した研究にも取り組んでいく。具体的には、輸入の増加と輸出の増加が日本の製造業の雇用にどのような影響を与えたのかについて、因果関係を識別できるような推定方法を用いて分析を行っていく。また、人口動態などの地域の特性や、産業連関的結びつきで見た各産業の特性を分析に盛り込み、「少子高齢化の進む日本」「国際生産ネットワークに組み込まれている日本」という日本経済の特徴に焦点を当てた分析を行っていく。分析結果はディスカッションペーパーとしてできるだけ早く公開し、広く意見を仰いで論文の質を改善していきたい。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナ感染拡大の影響で海外出張のみならず国内出張も大きく制限されていたことから、研究費の使用計画に若干の変更が生じた。また、研究課題に取り組み始めて1年目であったため学会等で研究発表ができる論文が限られており、英文校正など論文の質を向上させるような支出をする機会も制限されていた。以上の理由から、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度は、パソコンなどの物品購入費に400,000円、英文校正費200,000円、図書費200,000円、出張費500,000円等の支出が見込まれる。
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Research Products
(6 results)