2021 Fiscal Year Research-status Report
日本企業の保守的負債政策と財務的柔軟性についての研究
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21K13323
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
崔 ワイカン 名古屋経済大学, 経済学部, 准教授 (30882295)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 保守的負債政策 / 財務的柔軟性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本企業が保守的負債政策をとる原因と財務的柔軟性の有用性について究明することを目的とする。初歩的な分析では、日本企業は2008年の世界金融危機前に成長機会の多い企業は保守的負債政策をとるが、その後の数年間において保守的負債政策をとるのは成長機会の少ない企業と変わったことが分かった。この分析結果は日本企業の行動傾向を示しているが、その変化に至るまでのメカニズムを開示していない。そのため、より具体的な分析が必要と考える。企業が不況に陥る時など業績悪化が見られる場合、(財務的柔軟性を蓄える行為とも考えられる)費用削減のためによく用いられる手段の一つは人員削減、または従業員の福利厚生に関する費用削減である。さらに、従業員の満足度は場合によって企業価値に影響を与えることもある(Edmans, 2011)。したがって、企業の不況時における財務的柔軟性の決定要因を究明するために、まずは従業員待遇と企業の負債政策との関係について分析を展開する。 2021年度は初歩的な分析結果を踏まえ、文献サーベイとデータベースの構築を行った。既存文献から、Bae et al. (2011)を主要な参考論文として選び、モデル構築を進めた。他に、Edmans (2011)、Jensen (1986)、Chemmanur et al. (2013)、Ber et al. (2010)も参考となることが分かった。既存文献では、企業の負債政策(主にレバレッジを使用する)と従業員待遇との間にある相関関係について異なる意見が存在する。企業の高い負債水準が不十分な従業員待遇の原因となることを提唱する論文が存在する一方、良い従業員待遇が低い負債水準をもたらすと提唱する論文も存在する。さらに、従業員待遇と負債比率との間に正の相関があると提唱する論文も見られる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に問題となるようなことが起こらず、順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は仮説構築、計量手法の検討とデータの分析を主に行う。既存文献では異なる意見が見られるため、仮説構築を慎重に行うほか、日本の状況に適した分析も必要と考えられる。計量手法は既存文献を参考し、固定効果モデルを使用する。内生性が存在する可能性が高いため、GMMを用いる分析も必要と考えられる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大が懸念される中、学会がキャンセルされまたはオンラインに切り替わり、旅費支出が生じなかったため。次年度において物品費と論文執筆に関する費用として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)