2021 Fiscal Year Research-status Report
プラットフォームエコシステムにおける集合的両利き経営の研究
Project/Area Number |
21K13346
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 祐樹 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 助教 (80812388)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プラットフォームエコシステム / ビジネスエコシステム / 両利き / 二面性市場 / イノベーションマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果として、ビデオゲーム市場を対象とした詳細な統計的分析から、補完者の生存可能性は、補完者の両利きの状態(既存IP/シリーズの活用率により計算)、補完者のエコシステム内での競争の位置付け、プラットフォームの価値提案の内容によって、影響されることを明らかにした。補完者の平均的な生存可能性が高い状態は、総体的にみればエコシステム全体の持続的発展がなされるということを意味している。本成果はいくつかの示唆を提供するが、特に重要な結果の一つは、プラットフォームの価値提案が主要領域に偏るほど、「両利き」と「適度な競争への対応」の両方を実現できる補完者のみしか生存できなくなることを確認したことである。また一方で、プラットフォームの価値提案がニッチ領域に偏るほど、探索的行動や深化的行動に偏った補完者の生存可能性が向上したことが確認された。つまり、プラットフォーム企業によるプラットフォームの価値提案の定義と位置付けによって、補完者の生存可能性が高まる、つまり補完者が採用できる深化・探索のバランスの許容範囲が変化するということである。本成果は日本MOT学会年次研究発表会において発表した。今後は、理論的な強化と追加の分析を行い、国際的学術雑誌に投稿する予定である。 また、次年度に実施予定のアンケート調査に向けた、指標の探索についても進捗させた。より探索の幅を広げた方が良いという考えから、IoTプラットフォームとサービス提供プラットフォームに関する分析を実施した。前者からは、プラットフォーム上で探索的行動を行うためには、社内企業家の存在の重要性が浮かび上がった。後者からは、消費者が従来型サービスと非従来型サービス、いずれからどのような効用を得るかはサービス受容者に依存する、いわゆる価値共創の重要性の存在を再確認した。これらの成果は、次年度のアンケートの設計に活かす予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分析対象については当初予定した2種のプラットフォームから1種のプラットフォームに絞ったものの、研究成果については想定以上のものを得ることができた。また、次年度のアンケート調査の設計に向けて、計画段階では想定していなかった示唆を得ることができた。したがって、当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で当初の予定通り以上に研究が進捗しているため、今後も当初予定した通りの研究計画にしたがって進めることを考えている。ただし、アンケートの実施対象企業は、当初予定していたスマートフォンアプリケーション以外の業界も検討している。これは、本研究目的に鑑みて、プラットフォーム技術と補完者の意思決定の相互作用がより重要となる業界を選択した方が、さらなる知見が得られると考えたからである。
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Causes of Carryover |
本年度の予算は、主に研究成果の英文校正費とオープンアクセス費として計上していた。現在は英語論文1本を投稿中であるが、受理に至るまでには査読者や編集者の返答や迅速さによる不確定要素が絡んでくるため、結果的に次年度使用額が生じることとなった。 これらについては、次年度において計画通り、英文校正費とオープンアクセス費に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)