2021 Fiscal Year Research-status Report
オペレーショナルレベルの文化とその自律分散的な戦略機能に関する実証研究
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21K13357
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
陳 燕双 同志社大学, 商学部, 助教 (70844075)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オペレーションレベルの文化 / 自律的戦略機能 / 戦略の実行 / 多様性 / 文化形成のメカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ハイ・パフォーマンスを長期的に実現できている現場組織のオペレーションレベルの文化(業務遂行に関わる価値観・規範)の特質と戦略的機能を解明することである。初年度にあたる本年度(2021年度)は,新型コロナウィルスの感染拡大により中国における調査(対象企業①に対する密着観察とインタビュー)を実施することが困難であったものの,(1)オペレーションレベルの文化の戦略的機能の解明の他に、(2)ドキュメント分析、統計データ分析といった研究方法の探求、(3)文化の形成(共有)プロセスの解明を研究課題に新たに追加して、その3点を中心に研究を進めた。この作業を通じて,(1)文化の機能性に関する既存研究の把握,また(2)ミクロレベルにおける文化形成に関する理論的検討が進展した。 (1)について、企業目的の達成にむけて、業務遂行に関する価値観・文化は多様な現場構成員が協働する羅針盤として、上司の判断を仰がずに意思決定と柔軟な行動の指針として、文化の自律分散的な戦略機能を有することを企業事例研究により把握できた。 (2)について、文化が形成されるということの本質は、現場構成員に何らかの形で受け入れて、そのように行動するということを意味する。しかし、そのプロセスは必ずしも既存研究で議論されてきたように、企業の価値観・規範の個人への内面化を通じての文化共有を意味しない。また、組織文脈において、組織構成員が組織の信念や価値観、考え方といった文化要素を受け入れて行動するということは、組織の硬直的戦略行動をもたらすという既存の議論は必ずしも十全ではない。今年度は組織論のみならず、多様なディシプリン(文化社会学、文化心理学、文化神経科学)における新しい研究知見の渉猟を進めた。 今年度は文化の機能及びその形成に対する洞察を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画において2021年度は,関連領域の知見をレビューした結果をもとに中国対象企業に対してフィールド調査を行う予定だった。しかしながら、新型コロナウィルスの感染拡大により中国への渡航及び現地におけるフィールドワークが困難となったため、文献レビュー作業及び事例研究の比率を高めるように研究計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染拡大状況に応じては,現地でのフィールドワーク調査の実施が困難を伴う状況が続く可能性がある。しかし、本研究プロジェクトを前進させるべく、2022年度の課題を以下にする。第一は、オペレーションレベルの文化に対する分析を深化していくことである。文献レビューを進め続ける一方、一層の経験的研究の蓄積が必要である。そのために、第二は、新たな研究対象の開拓と研究手法の検討である。サウスウエスト航空、アマゾン、3M、アイリスオーヤマ、キリンビール、インテルの現場組織や戦略実行に関する文献などの定性的データもかなり蓄積されているため、複数のケースにおけるドキュメント分析を通じて、オペレーショナルレベルの文化の戦略機能に関する整理を行う。さらに、業務遂行の文化が強く機能する日本の中小企業も視野に入れて、直接ヒヤリングあるいはWEB上での質問票調査が可能な研究対象の開拓を積極的にしていく。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画において2021年度は,中国対象企業に対してフィールド調査を行う予定だった。しかしながら、新型コロナウィルスの感染拡大により中国への渡航及び現地におけるフィールドワークが困難となったため、予定通りに一部の費用を使えなかった。 2022年度に当該助成金を学会発表、英語論文校正、フィールド調査などに使用する予定である。
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