2022 Fiscal Year Research-status Report
オペレーショナルレベルの文化とその自律分散的な戦略機能に関する実証研究
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21K13357
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
陳 燕双 同志社大学, 商学部, 助教 (70844075)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オペレーションレベルの仕事文化 / 組織の学習環境 / イノベーティブな職場環境 / 組織慣行と文化形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、文献レビューを進める一方で、サウスウエスト航空、アマゾン、3M、アイリスオーヤマ、インテルを中心に事例研究を実施し、組織の諸慣行やマネジメントの仕組みと業務遂行に関わる文化がどのように関係しているのかを分析した。その一環として、Jody Hoffer Gittellが著した『The Southwest Airlines Way: Using the Power of Relationships to Achieve High Performance』の翻訳プロジェクトにも取り組んだ。 組織文化が組織の効率性、活力、パフォーマンスに影響するとみる経営者は少なくはない。しかしながら、多くの場合、文化のマネジメントは実質化されずに困難を極めている。上からの経営理念や「パーパス」構築の取り組みに留まり、それらを実質化し、深いところから支える組織メンバーの心情や思考回路まで深化し、組織全体に仕事の文化を浸透させる例は極めて例外的である。この点で、『The Southwest Airlines Way』は、業務遂行に関する仕事の文化が、どのような組織諸慣行によって、どのように構築されて維持されているかを詳細に実証しており、組織文化のマネジメントとは何かをよく示す貴重な研究である。この著書は、本研究で取り組むオペレーションレベルの仕事文化の研究に大きな示唆を与えるものである。 以上の研究から、オペレーションレベルの仕事文化の一つとして,事実とデータに基づいた論理的思考(エビデンスベースド思考)の文化を抽出した。しかし、エビデンスベースドで論理的に考える文化は実際の経営実践とその現場での日々の業務遂行においてどのように機能するか、また、組織の学習環境やイノベーティブな職場環境の形成にどのような役割を果たすのかは、必ずしも明らかにされていない。その解明を研究課題として進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、新型コロナウィルスの感染拡大のため、当初の研究対象(中国企業)に対するフィールドワーク調査の実施が困難となる可能性があることを鑑みて、科研費申請時の当初研究計画を文献研究に基づく事例研究をメインとする研究計画に変更した。そのためアウトプットは遅れているものの、研究は進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究実施計画として次の3点を計画している。 第1に、エビデンスベースドマネジメントに関する先行研究を整理する。 第2に、トヨタとインテルの事例を取り上げ、エビデンスベースド思考は実際にどのように機能しているのか、戦略策定と日々の業務遂行に分けて事例に基づく研究をまとめる。 第3に、3Mとアイリスオーヤマの事例を取り上げ、両社の経営諸慣行やマネジメントの仕組みとイノベーションに適合的な文化の形成と維持にどのように関係しているのかをまとめる。
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Causes of Carryover |
社会情勢により中国における実地調査の実施が困難となったため次年度使用額が生じた。この次年度使用額については、調査対象を中国に限定することなく経験的調査(日本の調査対象に対するインタビューなど)を検討・実施することで、適切に執行する。
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