2021 Fiscal Year Research-status Report
中欧における次世代自動車へのシフトとバッテリー生産集積に関する研究
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21K13359
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Research Institution | Hagoromo International University |
Principal Investigator |
岡崎 拓 羽衣国際大学, 現代社会学部, 准教授 (10823510)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中欧 / 自動車産業 / ポーランド / EV / 貿易 / 直接投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、研究計画に基づき、ポーランドを中心とした中欧自動車産業の産業ネットワーク分析を進めた。本研究では欧州新興自動車生産地域である中欧の次世代自動車対応に伴う構造変化に着目している。2021年度では、EV車、および関連部品・製品の生産拡大に伴う輸出構造の変化と、これまでの当該地域の自動車産業発展過程からの変容を分析した。 貿易構造については、中欧域内での自動車関連品目の輸出構造を分析し、特にポーランドからV4諸国とドイツに対する輸出動向に着目した。中欧諸国は自動車産業については輸出中心の構造となっている。2000年代以降中欧諸国ではEU域内への貿易関係強化と、V4域内での貿易関係強化の2重の構造変化が進行している。特に部品供給体制の深化も確認できた。当該地域の自動車産業発展過程からの変容については、1990年代以降の旧社会主義体制から市場経済体制への移行に伴う旧国営企業の民営化、EU加盟期の新規投資、さらに2010年代以降の次世代自動車対応に伴う新規投資の活性化と大手メーカー再編といった各段階での産業構造の特徴をまとめた。 COVID-19感染拡大状況下でのポーランド自動車産業の状況もまとめた。この中では、2020年前半の大幅な生産落ち込みとともに、メーカーによっては比較的早期に生産回復を実現していた点、および生産品目ごとでその状況が異なることも明らかにした。加えて、生産停止・縮小期間と並行して、EV関連の新規投資事案の進行も確認され、特にEV向けバッテリー生産拠点、および電気バスを中心とした商用車の電動化が進んでいることが確認された。 研究結果については、岡山大学経済学会雑誌第53号3巻にて、論文「欧州自動車産業におけるポーランドの位置づけの変化と現状」を投稿し、掲載された。また、欧州新興自動車産業の構造変化に関する書籍での原稿執筆も行い、現在編集作業中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代自動車関連の各主要メーカーの動向については、比較的順調に調査が進んでいる。COVID-19下の状況についても、おおむね情報収集、分析が進んだ。製品種別、企業別の生産状況のデータ収集、自動車関連製品の域内相互貿易関係に関するデータ収集も進んだ。 このような進捗に伴い、社会主義経済体制期以降、顕著にかつ繰り返し産業構造を変容させているポーランドの状況を取りまとめるとともに、当該地域に進出する主要企業のネットワーク深化の分析が進んでいる。後述の通り、研究論文、共著での出版など、研究発表も実現した。 研究の結果として、貿易関係の深化に伴う中欧域内ネットワーク緊密化とEUネットワークへのこれまで以上の緊密化という2重の意味での深化が確認された。貿易関係については、V4各国ごとの貿易関係の詳細な分析がさらに必要であり、引き続きデータの収集・分析を進める。 ただし、以前と比較して各メーカーの直近の活動に関する情報収集が難しくなっている状況がある。これにより個別企業の生産ネットワーク分析、および各企業ごとの詳細な完成車、部品輸出入関係データ、製品納入先・部品原材料調達先などの収集は想定ほどは進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はV4諸国を対象に、自動車産業におけるR&D(研究開発)の状況の調査と拡大の要因分析を進める。2000年代以降、徐々にR&D拠点の設立が主として完成車メーカー製造拠点に設置され始め、国内での産学連携や西欧との人材交流などのプログラムも開始されてきていた。しかしV4地域の西欧への輸出向け低価格小型車中心の生産体制は、産業の高付加価値化という課題も内包していた。 これをもとにV4自動車産業の質的変容を明らかにし、これまでペリフェリ領域としての役割を担った当該地域が、欧州自動車生産ネットワークにより多面的・重層的に結合し、V4地域が次世代自動車対応の中で新たな役割を獲得しているかを検証する。 現時点では海外渡航が難しい状況が続いており、2022年度末から2023年度初頭に予定している海外現地調査については、その時点での状況によって延期や中止となる可能性が存在する。またウクライナ情勢は本研究の研究対象であるポーランドおよびV4諸国にも今後も影響を与える可能性もあり、渡航の可否、情報収集の程度、産業・企業動向自体にも不透明な部分が存在すると考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の状況において、参加予定であった学会・研究会の多くがオンライン開催あるいは延期となり、計画段階では予定していた旅費支出が大幅に減少した事情がある。また、PCなどの物品購入も、学会参加、海外現地調査の時期に合わせての支出を検討しており、次年度以降の支出としたい。資料関係費用についても、次年度以降の海外現地調査での資料購入の可能性などを検討したうえで、それ以外の資料の購入費の調整、購入時期の検討を進める。
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