2021 Fiscal Year Research-status Report
所有構造とガバナンス体制の変化が及ぼす近視眼的行動への影響に関する実証分析
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21K13402
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
古賀 裕也 東北学院大学, 経営学部, 准教授 (40780383)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 近視眼的行動 / 利益マネジメント / メインバンク / 所有構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本企業の所有構造とガバナンス体制の変化が企業の近視眼的行動にどのような影響を与えているかを実証的に検証することである。具体的には、1990年代後半に生じた持合株式の解消とメインバンク制の崩壊に焦点を当てて、その前後における企業の近視眼的行動を調査する。経営者の近視眼的行動とは、長期的な投資活動による利益を犠牲にし、短期的な利益を増加させる行動をいう。 2021年度は先行研究の整理を主に行い、具体的な検証課題とリサーチデザインの設定を行った。先行研究を整理したところ、最近では近視眼的行動について調査した研究が多数発表されており、注目されている分野であることがわかった。これまでの研究では財務報告による情報の非対称性の減少やモラルハザードの抑制といった正の側面について多くの研究蓄積がされている。一方で、財務報告の透明性の高まりが、歪曲的なモラルハザードである近視眼的行動を助長する可能性を指摘する証拠も提示されている。近視眼的行動を調査した先行研究では経営者の近視眼的行動の要因として株主特性と経営者特性を指摘している。 株主の特性として投資家の洗練さや投資ホライズンがある。先行研究は洗練された投資家(機関投資家やブロックホルダー)が存在する場合、経営者の近視眼的行動が減少することを明らかにしている。一方で、一過性の投資家は短期的なリターンを要求するため、経営者の近視眼的行動を助長する可能性がある。経営者の投資ホライズンやキャリアコンサーンなど、短期的な業績への執着が近視眼的行動へ影響を与えていることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は先行研究の整理を主に行った。当初の予定ではリサーチデザインとデータセットを構築し、パイロットテストを行う予定であった。しかし、日本の状況を踏まえどのようなリサーチデザインを構築するのが良いのかを検討するため、幅広い先行研究を整理する必要があると考え、それに多くの時間を費やした。そのため、当初の予定よりも本研究課題の進捗状況はやや遅れていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はこれらの先行研究の結果を踏まえ、日本の特徴的なメインバンクのガバナンス・システムが企業の近視眼的行動にどのような影響を与えているのかを調査するためのデータセット構築と検証を行う。 データセット構築にあたっては時系列でのメインバンクの特定と持株比率のデータ取得が必要となる。メインバンクの特定方法がいくつかあるため、どのような方法で特定するかが問題となる。本研究では先行研究でよく用いられている企業の最大の融資先銀行をメインバンクとして特定することを予定している。
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Causes of Carryover |
当年度の当初の予定ではデータセットの構築のためのデータ取得に予算を計上することを予定していた。しかし、先行研究の整理やリサーチデザインの構築に時間が掛かったため、データセットへの支出を行わなかった。来年度はデータ購入のために当年度で余った予算を支出することを予定している。
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