2021 Fiscal Year Research-status Report
The Contribution of Deaf Faculty in Higher Education: A Mixed Methods Study
Project/Area Number |
21K13457
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
矢部 愛子 筑波大学, 人間系, 特任助教 (40890439)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国内外の高等教育 / 聴覚障害教員 / 大学生 / 情報保障 / 仮想評価法 / 混合手法 / 教育的貢献 / 能力発揮 |
Outline of Annual Research Achievements |
聴覚障害教員は支援費用が高いと言われている反面、聴覚障害教員による教育効果や社会的影響に関する研究は少ない。本研究では、国内外の聴覚障害教員の教育的価値を明らかにする。 研究手法としては、国内外の聴覚障害教員の授業を受けた学生に対し、説明的デザイン分析を採用する。まず仮想評価法によるアンケート調査、次にインタビューを行う。教員の授業の価値観とともに、教員の授業の経済的評価額とそれに影響を与える要因の関係性を分析する。 国内外の聴覚障害教員に対しては、探索的デザイン分析を採用する。学生時や教員時の支援体制の相違点について聞き取り調査を行い、支援の有用性を定性的に明らかにする。この質的分析結果の妥当性を、より多くの聴覚障害教員に対するアンケート調査から検証する。 令和3年度の研究結果として、仮想評価法の分析結果から、聴覚障害教員の授業に対する学生の平均評価額は年間1万円であることが明らかになった。日本の大学の年間平均授業料は817,800円であるから、1万円はその1.22%である。2020年度の日本の大学生数は291万6000人であり、その授業料総額の1.22%とすれば、全ての大学で聴覚障害教員の授業が実施された場合、年間291.6億円の境域的価値を持つと言える。 他方、聴覚障害教員からの聞き取り調査の結果、学生時や教員時の情報保障は、大学や国によって支援資金源や支援制度が異なり、支援体制の質も異なっていることが明らかになった。すなわち、支援費用は、日本や米国では主に大学が負担するため、大学からの支援額の拡充が求められ、カナダ、英国や西ヨーロッパでは国が負担するため、大学専門の手話通訳者の養成拡充や国際手話通訳の資金的援助の必要性が挙げられた。 このような分析結果を踏まえ、令和4年度は、学会報告や論文投稿を行う予定である。本研究は、筑波大学の研究倫理審査委員会の許可を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、当初計画していた国内外の大学における聴覚障害教員の教育的貢献に関する教員数(15名)よりも教員25名とのインタビュー実施でき、また予定していた学生人数(各50名)よりも学生104名とのアンケート調査実施できた。また、令和4年度に計画していた学生(15名)とのインタビュー調査、教員(50名)とのアンケート調査も、令和3年度に実施することが可能になり、予定よりも学生19名とのインタビュー調査、教員57名とのアンケート調査実施できた。さらに、日本、米国、英国、カナダだけではなく、ガーナ、南アフリカ、アイルランド、ドイツ、ベルギー、スウェーデン、フィルランド、ノルウェイ、オーストラリアの聴覚障害教員からのデータ集計もできた。続いて、令和3年度に実施した調査データについて、誤訳等の確認作業、研究成果の一部を2021年度障害科学学会大会や海外学会のオンライン発表できた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、質的・混合分析ソフト(NVivo)を用いて直接分析を行い、支援と能力発揮の関連性を特定し、統計的分析ソフト(SPSS)を用い、大標本によって検証する。質的・量的分析結果について国別比較を行い、教員支援費用と授業評価額を比較するととともに、費用対効果を総合的に考察した論文投稿する予定である。令和5年度は、研究成果を基にした本を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大防止のため、国内外出張を控える代わりに国内外のオンライン学会参加中心に活動し、旅費は0円となった。また、研究の予定以上の進展により、令和4年度に予定していた学生へのインタビュー調査及び謝礼金、手話通訳・文字起こし費用の予算40万円の前倒し支払を希望した。そのため、インタビュー実施後、使いきれなかった予算が余った。余った予算は、次年度使用額として、オンライン学会参加費、論文投稿の校正費、研究物品として使う予定である。
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